エルダー2019年4月号
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② 1週間あたり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月あたり80時間を超えた労働者の氏名と超えた時間に関する情報③ その他健康管理に必要な情報(作業環境、作業不可の状況、深夜労働の回数・時間数など)特に、②の情報については、速やかに(2週間以内を想定)提供する必要があると整理されており、時間外、休日の労働時間把握を毎月適切に行っておく必要があります。なお、該当する労働者がいない場合においては、該当者がいない旨を通知する必要があり、また、この②に関しては、産業医だけではなく、労働者本人に対しても通知する義務があります。②に該当し、かつ、「疲労の蓄積が認められる」労働者は、産業医による面接指導の対象者となりますので、産業医と労働者の双方に通知することで、長時間労働による健康への影響の早期発見に資するための制度改正になっているといえるでしょう。時間外労働が80時間を超えた労働者が存在しない場合においても、該当労働者がいない旨を通知しなければならないため、時間外労働が少ない企業においても、産業医に対する情報提供義務が軽減されるわけではありません。なお、時間外労働が80時間を超えている場合には、該当する労働者自身に対しても、通知する義務があり、該当労働者からの面接指導の申出が増加する可能性があります。労働時間把握の対象について3前記②記載の事由に該当する労働者には、管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者を含め、すべての労働者が含まれることとなりました。これまでの労働時間の適正な把握に関するガイドラインにおいては、管理監督者や事業場外労働によるみなし労働時間の適用がある場合は除外されていましたので、これまでの取扱いから変更されています。「労働時間」そのものの把握ではなく、「労働時間の状況」の把握とされ、労働者の労働日ごとの出退勤記録や入退室時刻を把握することが求められています。労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態であったかを把握することとされていますが、「労働時間」そのものの把握との線引きは困難でしょう。改正法の施行後は、管理監督者に関して労働時間の管理をすることは、管理監督者として評価されるために必要な時間管理を受けていないという要素との関係が問題となり、事業場外労働に関しては、「労働時間を算定し難い」という要件との関係が問題となるでしょう。管理監督者についても、労働安全衛生法に基づき「労働時間の状況」の把握を行う必要がある以上、単にタイムカードを使用していることなどを理由として管理監督者性が否定されることはあってはならず、今後は、始業・終業時刻の拘束がないことの表れとして、遅刻や早退に対して制裁をもって不利益な処分をされないことが重要な要素になっていくものと考えられます。事業場外労働については、労働時間の状況を把握することができれば、「労働時間を算定し難い」という要件を充足し難しくなることは否定しがたく、客観的な方法により把握できない場合に許容される自己申告制による労働時間の状況の把握を適切に尽くしていくほかないのではないかと考えられます。なお、自己申告制が許容されるためには、①労働者への適正な申告をするよう事前説明すること、②管理者にも同様に適正な申告をさせるよう事前説明をすること、③実態との合致について、必要に応じて実態調査を行い、相違があれば補正すること、④自己申告時間以上の労務提供が見受けられる場合には、労働者に報告させ、内容の適正さを確認すること、⑤適正な申告を阻害する措置を講じないことなどが必要とされたうえ、翌労働日までの申告が適当とされています。これらの要素を見直しながら、事業場外労働を適正に実施可能か確認しておくべきでしょう。エルダー49知っておきたい労働法AA&&Q

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