エルダー2019年4月号
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 「働き方改革」で重要なのは、長時間労働の是正や処遇改善だけではありません。高齢従業員の増加にともない、病気を抱える高齢者が、持っている能力を安心して発揮できるよう、病気の治療と仕事の両立を支援する取組みがいままで以上に重要になります。そこで、事業者に求められる両立支援のポイントについて解説します。治療と仕事の 両立支援のポイント働き方改革高齢者雇用と産業医科大学 保健センター 副センター長 立石清一郎まとめ・その他の留意事項最終回2019.450事業者にとっての両立支援を行う意義これまでの連載のなかで、両立支援を行う体制整備、個人情報の取扱い、職場復帰プランの策定、がん・循環器疾患の支援の特徴などについて紹介してきました。読者の方のなかには、「たいへん」や「めんどう」という印象を持っている方もいるかもしれません。そこで最終回の今回は、「なぜ、事業者が両立支援を行う必要があるのか」についてお話したいと思います。これまでは「労働者を雇おう」と思ったら簡単に雇える時代でした。しかしながら、すでに日本の人口はピークを迎え、これからは人口減少時代に突入し、生産年齢人口とされてきた15〜65歳は実数・割合ともに低下していきます。高齢であったり病気を持っている労働者が社会参加しなければ、必要な労働力が足りなくなる時代がすぐそこまで来ているのです。安定的な経営を行うために、働く能力のある人材を活かす仕組みを持っていることはたいへん重要といえます。画一的な人材ばかりをそろえている企業は、視点も画一的になりがちで、イノベーションが起きにくく、場合によっては消費者から置き去りにされてしまうということになるかもしれません。多様な人材を企業のなかで抱え、活躍できるよう、柔軟な対応をすることが企業の成長につながることでしょう。健康経営に対する意識の高まりが出てくると、自然に「労働者を大事にしたい」という視点から、病気を持った人たちへの支援の必要性に気づき始めてくるのではないかと思います。事業者が両立支援を行うことのメリットとしては、以下のような点があげられています。・ 従業員の定着率の向上および人材確保・ 企業イメージの向上・ 当該社員と同僚のモチベーションや安心感の向上・ モラール(士気)の向上一義的には両立支援は病気を抱えた労働者のサポートですが、企業価値を高めることにも寄与することが期待できます。両立支援についての社会資源両立支援の際は病状に合わせて必要な配慮(安全配慮、合理的配慮)を実施することが求められます。したがって、病気により発生する症状と仕事を調和させるための取組みが必要になります。しかしながら、特に中小零細企業などでは、そのような専門職が不在であることもしばしばです。そのような場合には社会資源として、(独)労働者健康安全機構が各都道府県に設置している

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