エルダー2019年4月号
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※ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000162833.htmlエルダー51産業保健総合支援センターの両立支援促進員(看護師、保健師、社会保険労務士など)を活用することができます。事業者への個別訪問や事業者と労働者の個別調整など、幅広い支援を請け負っています。また、両立支援コーディネーターという資格を持つ者もいます。両立支援コーディネーターは、企業と医療の情報共有を円滑にするための研修を受けています。企業や従業員が受診している医療機関内に資格取得者がいる場合には、相談してみるのもいいのではないかと思います。さらに、各都道府県労働局では、中小企業が就業規則を整えたうえで両立支援を行った際に、助成金を支給する制度もあります。助成基準などの詳細については、厚生労働省のホームページ※をご覧ください。病気になってもあわてないためにほとんどの人は、明日病気になることを想定して日々の生活を送っていません。今日と同じ明日があると信じ、仕事をし日常を過ごしているのではないかと思います。そんななかで突然病気を宣告された場合、診断・治療に向けてさまざまな意思決定が必要になります。例えば、がんであれば、健康診断受診、精密検査受診、結果説明、診断・病気の確定、治療方針の決定、治療費の計画などを、そのときどきに対応し、決断することが要求されます。しかも、それらは仕事や社会生活に大きな影響を与え、さまざまな調整要件が重なることになります。考えなければいけないことが急激に増える状況が発生するのです。もともと人間は、マルチタスクが苦手です。そのうえ、がんの診断を受けたショックや副作用の問題なども発生します。見た目は元気そうにしていても、多くの方がそのような状況を何とか乗り越えようとしているわけです。これらについて、少しでも負担を少なくするには、業務上の配慮もさることながら、普段からの準備も必要になってきます。病気にかぎらず、急に休まざるを得ない状況というのはだれしも訪れることです。業務内容の共有化、代替可能性の確保など、だれかが急に休まざるを得なくなっても対応できる可か塑そ性せいを、組織として持っておくことが必要です。また、従業員教育として、生涯二人に一人はがんになることを想定するような訓練を積ませておくことも、今後は必要になってくると考えられます。いざというときに本人がパニックにならないように、そして周囲もその状況をしっかりと受け入れられるように、大人のがん教育が、今後展開されることが期待されます。すべての人が労働者として輝けるためにいろいろと書いてきましたが、実はほとんどの企業が、すでに両立支援にかかわる対策を実行していると思います。例えば、治療のために半日休暇を許可して病院への受診を認める、気分が悪いときに休憩室の利用を認める、体力が弱った人に自動車通勤を認める、などは、気がついていないかもしれませんが、何らかの体調不良に対して「お互いさま」の気持ちでサポートしている現状があるのではないかと思います。こういった対応は立派な両立支援の活動です。可能な範囲で本人の希望を検討すること、これは合理的配慮の精神そのものです。あまりむずかしく考えずに、無理のない範囲で、「いまできることをしっかり行う」、くらいの軽い気持ちから始めていくと、数年後には素晴らしい両立支援を実施する職場になっていることと思われます。最初から100点を狙うのではなく、小さな一歩を積み重ねて、よりよい支援体制の構築を目ざしていただければ幸いです。 障害者雇用安定助成金 両立支援検索

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