エルダー2019年4月号
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2019.462「着る人の個性を活かす洋服づくりの楽しさを次の世代に伝えつつ、自らも探究し続けていきます」た「第30回技能グランプリ」に挑戦する佐々木美咲さんが仕上げの指導を受けていた。「美咲さんは、縁あって看護師の仕事からこの世界に飛び込んできました。技能グランプリには全国から熟練の技能士が集まります。頂点を目ざして一緒に腕を磨いてきましたから、私の方がつい熱くなってしまいます」と、裁断、縫製に集中する佐々木さんの手元を優しく見つめた。自分が着たい洋服を 自分でつくる楽しみ秋間さんの実家は製粉工場で、洋裁とは無縁の世界で育った。共立女子大学短期大学部家政科を卒業後結婚、しばらくは育児に追われたが、35歳のときに転機が訪れる。子どもが小学生になったこともあり、都内の洋裁学校に通い始めたのである。「動機は単純で、既製服のなかに自分が着たいものを見つけられなかったのです。なければ自分でつくろうと思いました」。洋裁学校を首席で卒業し、日本のオートクチュールの基盤をつくったといわれる細野久ひさし服装学院で学んだ。今回の「現代の名工」の受賞では「服地の柄の一部を切り抜き立体的に見せる技法」が縫製技術として高く評価されているが、細野久服装学院で学んだことが原点となっている。その後、百貨店で仕立職人の経験も重ね、1981(昭和56)年に自宅で洋裁教室を開設。現在、10代から70代までの幅広い年齢層が洋服づくりを楽しんでいる。ドレスに絵を描く大胆な発想工房の隅には、コンクールで賞をとった作品をまとったトルソー※が並ぶが、ひときわ目を引く作品があった。何と素材は黒い皮ひ革かくで、佐々木美咲さん(左)を指導する秋間さん。日ごろの修練が実り、佐々木さんは「第30回技能グランプリ」の婦人服制作部門で金賞に輝いた※ トルソー……衣服やファッションの陳列に用いるマネキン人形の一種

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