エルダー2019年5月号
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特集エルダー9年下管理職のための年上部下マネジメント術査では、年下上司の元で働いたことがある人の約6割が「仕事がしづらい」と感じ、その理由として、「人の使い方が下手」、「知識・知見が少ない」、「人の意見を受け入れない」、「人望がない」ということをあげていました。私が、多くの企業に年上部下の実態を取材した際に、年上部下から多く寄せられた年下上司への意見・要望は以下のようなことでした。①わかってくれない・聞く耳を持たない 自分が管理職として経験したことをアドバイスしても、それをわかろうとしない、実行しない。②もっと頼りにしてほしい 顧客とのトラブル対応ができていない。私をうまく使ってくれればいいのに。役員への根回しや、社内調整役はいってくれれば私がやるのに。③上から目線の指導が厳しい 組織の論理として正論ではあるが、年下部下と同じように年上部下に対しても詰問してくるとやる気が失せる。「組織をよくしたい」、「組織に貢献したい」、さらには「上司を支援したい」と思っている年上部下も少なくありません。年上部下には、独自の強みやよいところもたくさんあります。うまく接することで頼りになる存在になっていきます。 年上部下のマネジメントが上手な人と下手な人では、その対処の仕方にさまざまな違いがあります。ここでは代表的な例を紹介します。●年上部下のマネジメントが“上手”な年下上司が行っていること年上部下のマネジメントに優れた年下上司が最初に行っていることは、年上部下の気持ちへの配慮です。これまでの経験やその人の性格などを考慮しながら、対話を通じて「どんな気持ちで仕事しているのだろうか」、「頻度の高いコミュニケーションを好む方なのか」、「口出しされるのを嫌だと感じる方なのか」といった心理状態・気持ちを理解しようとしています。同時に、年上部下の「強み」や「よいところ」を見つけようとしています。知識、専門性、技能、人との接し方、人脈、人間性など、これまでの社会人経験でつちかわれた「よいところ」は必ずあるはずです。その一方で、自分の組織をどうしていきたいのか(目ざす姿・ビジョン)を自分の考えとして整理し、部下全員に対して打ち出しています。そして、その実現のために、年上部下の強みをどのように活用していくのかを考えています。ビジョンを年上部下に直接伝える際には、単に事務的に伝えるのではなく、相談する姿勢で協力や支援を要請しています。そのことで本人のやる気を動機づけ、前向きな行動を引き出しているのです。このプロセスを進めるうえで大事なことは、「立場や気持ちの尊重」、「年上部下の強みの理解と尊重」、「謙虚な姿勢」です。キーワードとしては「さんづけ」、「感謝」、「教えてもらう姿勢」、「敬意」、「傾聴」などがあげられます。●年上部下のマネジメントが“下手”な 年下上司が行っていること多くの職場でありがちなのは、年上部下に遠慮しすぎてしまい、明確なコミュニケーションが取れていないことがあげられます。仕事を任せる際に「年上に対してお願いしにくいな……」、「あまり細かなことまで口出しするのはどうだろうか」と考え、あいまいな指示になっています。さらには、任せたつもりで放置してしまい、成果物が出た時点で勘違いに気づいて軌道修正するため、双方とも不満を抱き、それが不信感に発展します。細かなことまでは指示しなかったとしても、ゴールや留意すべきこと(最低限の手順や制約条件など)を明確に伝えて、お互い納得のうえで仕事を進める必要があるのです。また、年上部下に対して優位に立とうとする意識の強い年下上司の場合には、「よくないところ」ばかりに着目したり、断片的な情報によってその人となりを決めつけてしまう傾向が強い

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