エルダー2019年5月号
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2019.510のです。そのような感情は、必ず年上部下本人に伝わります。それによって年下上司への反発の感情が芽生え、その上司の「よくないところ」を粗探しします。「上司なのに……」、「こんなやり方だからダメなのだ……」とさげすんだ言動をするようになっていきます。そうなると、年下上司は「なめられたら負けだ」という感情が先走り、組織の論理を通そうと、より一層「上下の立場を強調」して「上から目線」で「一方的な通達」に終始し、挙げ句の果てには「最後まで話を聞かずに反論」するといった行動を取ってしまいます。そのことで年上部下の気持ちはますます離れ、職場全体が閉へい塞そく感に包まれ、組織に対する懐疑的な雰囲気が蔓延してしまうのです。企業による年下上司の支援の在り方₃(1)年上部下に向き合うために押さえておきたい考え方ドラッカー※5やコッター※6など現代のマネジメントに関する研究に影響を与えた理論に「マネジメントシステム論」※7があります。この理論は1961(昭和36)年に社会学者のR・リッカートが提唱しました。リッカートは個人を組織のなかに統合するため、その個人の属する集団を連結ピン構造によって解明する方法を見つけました。この理論において、管理者・監督者などのリーダーは「連結ピン」(経営陣と部下とをつなぎ合わせること)となって組織内の集団間をつなぎとめ、上下左右のコミュニケーションを促進する役割を果たす機能をになうべきとしています。経営とメンバーをつなぐ「連結ピン」である管理職の役割は、図表5のように表せます。組織内において管理職は、二つの観点からコミュニケーションを取る役割があります。一つは「数字のコミュニケーション」(左下部分)であり、もう一つは「言語のコミュニケーション」(右上部分)です。管理職は、業績など目標の達成を目的としているため、経営陣に対しても部下に対しても、数字でコミュニケーションをとっていくことが求められます。また同時に、管理職は、経営陣には「経営言語」、メンバーには「キャリア言語」という、それぞれに違った言語でコミュニケーションをとっていかなければなりません。経営陣のビジョン実現に向けて、どんな付加価値をもたらすべきか戦略を提言し、そして付加価値実現のために、メンバーそれぞれの強みに応じて仕事を任せて成果を出し、各々の成果をつなぎ合わせることが求められます。管理職は、仕事を任せるときにも「Aさんは将来こういうキャリアを想定しているよね。この仕事は、こういう能力を高めるから将来のキャリアのためにやっておいたほうがいいと思う」というアプローチで、部下の自発性を引き出していきます。また、一人ひとりが自発的に取り組み、創造性を発揮し、仕事の幅を広げてキャリアを高めるための支援を行うことが求め※5 ピーター・ドラッカー……世界中の経営者や経営学者に多大な影響を与えた経営学者で、「マネジメントの父」と称される※6 ジョン・P・コッター……企業におけるリーダーシップ論の権威。ハーバード大学ビジネススクール名誉教授※7 マネジメントシステム論……リーダーシップ行動論の一つ。組織の「業績」と構成員の「モチベーション」を理論化したもの※8 KPI……「需要業績評価指標(key performance indicator)」のこと。目標の達成度合を計測・監視するための指標図表5 経営(役員)とメンバー(部下)をつなぐ管理職の役割チーム志向目的:目標達成手段:KPI※8マネジメント   チーム貢献度目的:ビジョン実現手段:戦略実現   組織力構築言語のコミュニケーション数字のコミュニケーション経営(役員)メンバー(部下)マネジャー(管理職)数字数字キャリア言語評価・育成経営言語※筆者作成

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