エルダー2019年5月号
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2019.512ます。プロジェクト活動などを通じて、後輩に仕事のPDCA※9の基本を伝え、後輩個々人の生産性のみならず、組織全体の生産性の向上を支援してもらうことも考えられます。(3)黄たそ昏がれシニアへの対応ここまでキャリア言語でのコミュニケーションや強みの活用方法について述べてきました。しかし、現実的には管理職レースから早々に脱落してまともな仕事が付与されなかった方や、「役職定年」となってやる気を失った方の話はよく聞きます。そういったいわゆる「黄昏シニア」の対応に悩みを抱えている年下上司は少なくありません。そこで私が推奨するやり方は、「伸びしろ」に着目することです。「伸びしろ」とは「能力を出し切ってはいず、まだ成長する余地があること」(デジタル大辞泉)です。「伸びしろ」は、あるべき姿に向かって段階的に成長することではありません。自分のやってきたことに対して好きなことやワクワクすることを思い出してもらうことから始めます。最大の成果は本人の自己肯定感が引き出されることです。また自己肯定感を引き出していきながら自己効力感を高めていきます。その結果、好奇心を持って外の世界に目を向けて交流できるようになり、交流から得た学びを実践で活かしていけるよう支援していきます。伸びしろの種類は四つです。①﹁スキル﹂の伸びしろ②﹁行動﹂の伸びしろ③﹁学び﹂の伸びしろ④﹁志(こころ)﹂の伸びしろこの四つのステップを持って「伸びしろ」を発見し、活かす方法を見出し、支援します。︿第1ステップ﹀﹁スキル﹂の伸びしろ過去において大事にしてきたこと、過去に後悔していること、自身の転機となる出来事などを質問して、四つの象限(図表6)のどこに当てはまるかを探っていきます。仕事の仕方がチーム志向なのか、個人志向なのか、または頭を使った仕事が好きなのか(頭脳派)、現場で汗をかく仕事が好きなのか(肉体派)を判断し、その人の志向性を探ります。︿第2ステップ﹀﹁行動﹂の伸びしろ四つの象限のなかで当てはまるものを見つけたら、そこから過去・現在において具体的にどういう取組みをしてきたのか。そのとき、ワクワクしたことや、やり残してきたことで、チャレンジしたいことを聞いていきます。そしてどのように行動してきたかを列挙し、そこに今後取り組みたいワクワクする出来事をあげてもらいます。︿第3ステップ﹀﹁学び﹂の伸びしろどうすればワクワクして仕事ができるのか、期待されている役割に当てはめ、どういった成果を出すのかをヒアリングします。そしてチャレンジするようにマインドセット※₁₀を変えるために、ステップ目標を立ててもらい、定期的に1対1の面談を通じて支援する約束をします。そして小さな成功体験を積んでもらえば、50代後半になってもパフォーマンスが高まります。もちろん、転職もできます。「スキル」扌「行動」※9 PDCA…… 「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Action(改善)」をくり返すことにより、業務を継続的に改善すること。「PDCAサイクル」ともいう※₁₀ マインドセット…… ものごとの判断や行動に移す際に基準とする考え方図表6 スキルの「伸びしろ」マトリックスチーム志向肉体派頭脳派個人志向創 作プロジェクトリーダーもの造り・商品開発人を見るモチベーターマネジメントタスク処理オペレーター事務コンセプチュアル化クリエイター企画

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