エルダー2019年5月号
15/68

特集エルダー13年下管理職のための年上部下マネジメント術扌「学び」のステップで「伸びしろ」を見つけ、活かす手段を提示することが重要です。︿第4ステップ﹀﹁志(こころ)﹂の伸びしろまた、非常に高いパフォーマンスを出しているエース社員や元々活躍していたが役職定年で年上部下になった人には「志(こころ)」の伸びしろに着目してカウンセリングしていきます。エース社員はやってきたこと、これからやりたいことが明確になっていることが多く、その人の「志」や「キャリアコンセプト」から聞き出すとスムーズにいき会話も弾みます。企業がシニアに期待する役割としては、人材育成や技術伝承に関することが多いでしょう。年上部下がつちかってきた、たくさんの経験や「相手のためを思う気持ち」、「さまざまな社員が楽しく働ける方法」といった知見は、質・量ともに若い方の持っているノウハウを上回ります。そこに気づいていただき、日ごろの言動や行動に反映してもらいます。そうすると、いままでと違った接し方や仕事の仕方に周囲も気づき、コミュニケーションが増え、職場で良好な関係が築け「組織の潤滑油」になってもらえます。年上部下には人生100年時代に向けて「志(こころ)」扌「学び」扌「行動」、時には「スキル」というステップで「伸びしろ」を見つけ、活かす手段を提示します。「黄昏シニア」を蘇よみがえらす方法として「伸びしろ」に着目するマネジメントは有効です。いきなり行うことはむずかしいと思われる場合は、管理職に対して教育訓練するといいでしょう。また、上司と部下の関係がギクシャクしている場合は、キャリア開発研修として年上部下の方に受講していただくことをおすすめします。おわりに₄今後、社会や企業の事情から、年上部下の問題は間違いなく大きくなっていきます。上手く扱えば年上部下の力を有効に活用して組織全体の活性化につなげることができます。人は年齢を重ねると、新しいことに取り組む気力が減退し、加齢によって体力は低下し、それにともなってモチベーションも低くなるかもしれません。しかし、結晶性知能(学習[経験]の蓄積によって判断する力、問題を発見する力)は加齢とともに上昇します。豊富な経験を持った年上部下の結晶性知能を活用することこそが、イノベーションの種である新しいアイデアの創出につながるかもしれません。年上部下を持つことで、マネジメント上の悩みは増えるかもしれませんが、このことは年下上司にとってメリットをもたらします。今回テーマとしている「年下上司/年上部下」の問題のみならず、「異性の上司/部下」、「外国人上司/部下」など、職場の人間関係の多様性や複雑性はより大きくなっていくでしょう。さまざまなバックグラウンドや志向を持った部下に向き合うことで、「多様性・複雑性に対するマネジメント力」は間違いなく鍛えられます。何よりも、年上部下は人生の先輩であり、数多くの経験から自分にはない知識や考え方を吸収することができれば、成長にもつながります。とはいえ、年上部下に対するマネジメントの問題は、根が深く一筋縄では解決できません。人事部としては、人員構成比上のボリュームゾーンであるバブル期入社の社員が本格的なシニア期を迎える前に、早めに対策を検討しておくことが求められます。すどう・ともひろ一般社団法人組織内サイレントマイノリティ 代表理事/多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 2003年に日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長として8年半務める。2011年7月からインテリジェンスHITO総研リサーチ部主席研究員として中高年の雇用やキャリア、女性躍進、障害者雇用などの調査研究活動を行う。2016年7月に一般社団法人組織内サイレントマイノリティを立ち上げ、現在に至る。主な著書に『CHO〜最高人事責任者が会社を変える』(東洋経済新報社)、『キャリア・チェンジ!』(生産性出版)など多数。

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る