エルダー2019年5月号
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2019.516職場に与える悪影響  ―モチベーションの低下が職場に波及―このタイプの年上部下は、モチベーションが低めで、なにかにつけ「私はもうすぐ退職だから」、「大過なく働ければ」といったことをいいます。こういう発言が続くと、チーム全体のチャレンジ精神やモチベーションが削そがれてしまいます。また、仕事を頼もうとしても、「いまさら新しいことはちょっと」、「チャンスは若い人にあげてください」という感じで避けようとします。しかし、管理職にとって、経験のある年上部下は職場の重要な戦力。しっかり仕事をしてもらわなくてはなりません。ここからは、「モチベーションの上げ方」、「仕事を引き受けてもらう方法」、それぞれについて解説します。低いモチベーションを上げるにはモチベーションの向上は、年上・年下にかぎらず、むずかしいものです。年上部下の場合は、組織のなかで先が見えていることも多く、さらにむずかしくなります。むずかしい状況では原則が頼りになります。まずは、モチベーションの原則を確認しましょう。現代のビジネスパーソンは、「アメとムチ」のような単純な方法では動機づけできません。いまは、次の三つがモチベーションのタネになると考えられています。1.自分の仕事には価値があるという実感2.自分は職場で価値ある存在という実感3.自分は成長しているという実感この三つの実感を高めることが現代のモチベーションの原則です。ただ、年上部下に関してはこの三つとも実感を持ちにくいこともあり、年下の部下とは違った工夫が必要になります。順に考えましょう。「自分の仕事には価値がある」という実感を持ってもらうためには、視野を広げてもらう必要があります。年上部下にとって、多くの仕事は慣れたもの。どうしても、狭い視野で作業としてとらえてしまいがちです。自分の仕事に価値を感じてもらうには、視野を広く持ってもらうことがポイントです。そのためには材料が必要で、その材料は職場の外にあります。例えば、その仕事の前工程や次工程の人々の声、あるいは顧客の声などその仕事が影響をおよぼす人々の声。それらを伝えるとよいでしょう。例えば、会話は次のようにします。上司 ○○さん(年上部下)が担当してくれたあの仕事ですが。部下 どうかしました?上司 最終的によい形で収まって、みなさん喜んでいたそうですよ。部下 そうですか、それはよかった。上司 ○○さんのおかげです。このようなことが、「自分の仕事の価値」を実感させます。次の「自分は職場で価値ある存在である」と人柄がよく協調的だが、仕事に対して消極的な元先輩の年上部下。本来は力を持っているのに、遠慮がちで、仕事を依頼しようとしても、尻込みしてしまうことが多い。ケーススタディ 2 遠慮しすぎて、本来の力を発揮してくれない元先輩

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