エルダー2019年5月号
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特集エルダー17年下管理職のための年上部下マネジメント術いう実感は、職場の長である管理職のコメントがカギになります。「○○さん(年上部下)がいてくれているおかげで、職場に落ち着きが生まれています」、「豊富な経験談は、私を含め、若いメンバーにとって貴重です」、「職場の相談役になっていただいて感謝しています」といったコメントが職場での価値を実感させます。そして、自分は成長しているという実感のカギも管理職のコメントがポイントになっています。「新しいシステムに職場で一番早く適応できたのは、○○さん(年上部下)でした。いまなお、スキルを上げ続ける姿には頭が下がります」といったようにコメントすることで、成長を実感できます。このように、年上部下のモチベーションを上げるカギは、すべて管理職が握っています。仕事を引き受けさせる会話術遠慮がちな年上部下に仕事を引き受けてもらうには、ハードルを下げることが有効です。このタイプの部下は、重たい仕事を一人で担当することに不安を持ちがちです。そこで、その不安を軽減します。例えば、次のようにします。上司 ○○さん(年上部下)お願いがあります。部下 なんでしょうか。上司 法改正にともない、業務マニュアルを変更しなくてはなりません。部下 はい。上司 それを○○さんにお願いできないかと思いまして。部下 いやー 厳しいですね。上司 もちろん、お一人でということではありません。昨年異動してきたAさんと一緒にお願いしたいのです。部下 そうなんですか。上司 この仕事を通じて、Aさんにこの部署の仕事を理解してもらいたいと思っています。ただ、Aさん一人に頼むのは荷が重いと思っています。部下 そうかもしれませんね。上司 そこで、この仕事をAさんと一緒にやってほしいのです。たいへんなところは私も手伝います。部下 うーん。上司 職場のみんなも、○○さんの仕事なら協力すると思います。みんな○○さんを慕っていますから。部下 そうですか。では、私でよければ。ここでポイントになるのは、「一緒に」、「手伝う」、「みんな」というセリフ。このタイプの年上部下の、協調的な部分に訴えるわけです。いったん仕事を引き受けてもらえば、このタイプは真面目に取り組んでくれます。コツコツと仕事を進め、期待に応えてくれるでしょう。活き活きと働いてもらうためにこのタイプの年上部下は、遠慮がちなのですが、それは裏を返せばきめ細かい配慮ができるという強みでもあります。そのため、細やかな配慮が必要な仕事を担当してもらうと力を発揮します。例えば顧客の相談に個々にのるような仕事では、親身になって対応してくれるでしょう。また、職場メンバーの愚痴の聞き役、相談相手など、職場のカウンセラー的な存在にもなってくれるタイプです。このタイプの年上部下には、一人で難題を解決するスーパーマンになることを求めるよりも、職場および職場メンバーを支援するスーパーお助けマンになってもらうほうが活き活きと働いてくれます。このタイプの年上部下にとって一番の報酬は、周囲からの「ありがとう」の言葉だからです。

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