エルダー2019年5月号
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2019.520日本を代表するクリスタルガラス専門メーカー茨城県龍りゅうケが崎さき市の産業拠点、つくばの里工業団地に本社と工場を構えるカガミクリスタル株式会社は、1934(昭和9)年に創業。日本の近代ガラス工芸がまだ確立していない時代に、創業者である各かが務み鑛こう三ぞう氏がドイツでクリスタルガラスの製造技術を学び、帰国後、日本初となるクリスタルガラス専門工場を設立し、国産クリスタルガラスの製造を開始した。もともとは東京都大田区蒲田で事業を営んでいたが、29年前の1990(平成2)年に当地に移転した。同社の高い技術力がよくわかるのが、創業者によって伝えられた「グラヴィール彫刻」※1。回転軸に取りつけた銅製の円盤に研けん削さく材をつけて高速で回転させ、そこにグラスなどを押しつけて削っていく技法である。繊細な表情や陰影、さらには立体感まで表現することができるが、習得が非常に困難で、熟練の技を要する。江戸時代の伝統と現代性をあわせ持った「江戸切子」も人気が高い。ダイヤモンドホイールという円盤状のカッターをモーターで回転させ、その上にガラスを当てがって幾何学的なパターンを彫り込む技法で、クリスタルガラスの美しさをより際立たせることができる。同社の生み出すクリスタルガラスは、その美しさと格調の高さによって国内外で高く評価されており、宮内庁、迎賓館、在外公館、各国大使館、首相官邸などの正せい餐さん用食器としても使われている。東京・銀座にある直営ショップには、外国人観光客も数多く訪れている。長く働き続けられるように職場環境や教育を重視従業員数は、現在87人(男性62人、女性25人)。営業部門と直営ショップを除く60人強が、本社・工場で働いている。平均年齢は39歳(同44歳、39歳)。近年は、新卒採用や中途採用で毎年1〜2人、若手を採用しているため、以前と比べると、だいぶ若返りが図られてきた。従業員の多くは地元出身者だが、日本を代表するクリスタルガラスメーカーであることから、「ぜひガラスの仕事をやりたい」と、遠方から応募してくる人もいる。昨年も、四国で事務系の仕事をしていた女性が、「成形」の仕事をしたいと応募してきた。成形とは、1000度にもなる窯でガラスを溶かして水あめ状にし、吹き竿で適量を巻き取り、空気を吹き入れて型に入れ、そこからさらに空気を吹き入れてグラスなどの原型をつくる仕事。体力的に厳しい職場だが、意欲を買って採用したところ、先輩たちが感心するほどの働きぶりだという。同社の定年年齢は60歳。その後は、原則希望者全員を1年契約で65歳まで再雇用する。65歳以降は、会社が必要とする人材を個別に雇用延中間管理職の意識改革を目的に「就業意識向上研修」を実施カガミクリスタル株式会社(茨城県龍ケ崎市)※1 本誌2016年1月号「技を支える」には、同社のグラヴィール職人・松浦松夫さんに登場していただいた企業事例エルダー 2016年1月号検索

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