エルダー2019年5月号
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特集エルダー23年下管理職のための年上部下マネジメント術ごすのではなく、何をしなければならないか』という理解が深まりました」と評価している。参加者からは「部下を知る(人を知る)ことの重要性について理解が深まった。自分に置き換えてみると、自分を理解しようとしてくれたり、自分を意識してくれている態度はモチベーションの向上につながる。そのような行動を、自分も部下や同僚に対して行えるようになりたい」、「コミュニケーションを取るうえで大切なことを学べた。また、ハラスメントは、自分にそのつもりがなくても、受ける人の印象で変わるので、普段のコミュニケーションは非常に大切だと思った」など、今後のマネジメントの改善につながる感想も数多くあがった。今後は、「この研修を全社員で実施できると一番よいと思っています。また、入社から3年、5年、10年などの節目に、世の中の流れや考え方、仕事を続けていくために必要なことなどを継続して学ぶ機会をつくっていければと考えています」(野尻部長)という。垣根のないコミュニケーションが組織力を高める前述のように、同社では、管理職が年上部下との関係に悩まされる状況にはなく、その背景として、年齢の逆転が少なく、定年再雇用者は通常業務のラインから外れているということがあるが、もう一つ、重要なポイントがある。それは、年齢にかかわらず、社員同士の仲がよいことだ。普段から若手も高齢者も垣根なく交流できているので、管理職が高齢の部下に業務の指示などをしなければならない場面が生じても、問題が起こりにくい風土ができている。2017年には、それまで職場単位で行っていた忘年会を試験的に会社全体で開催したところ、従業員から大変好評だった。2018年も、労働組合と共催で同様の忘年会を行った。また、2018年には、自社のグラスを納入している東京宝塚劇場を見学する〝研修〞も実施した。希望者を募り、バスをチャーターして、観劇と食事、直営ショップの見学をしたが、自分たちのつくったものがこうしたところで使われていると知ってモチベーションが高まるとともに、普段接しない他部署の人とのコミュニケーションも深まった。こうしたイベントでは、高齢者が高齢者同士で固まるようなことはなく、世代を問わずコミュニケーションが取れている。野尻部長は、「それまで上司だった人が部下になった場合、どうしてもむずかしい面も出てくると思いますが、当社の場合、そうした状況になっても、比較的垣根なく、コミュニケーションが取れていくのだと思います」ととらえている。経営層と従業員とのコミュニケーションもよく、望月社長は、「従業員に会社に対するフィードバックを求めるとともに、私も従業員へのフィードバックを心がけています。生産量などの結果を現場に貼り出しているほか、売上げ、利益、改善状況を3カ月に1回、全社員に説明しています。これは、私が就任した2013年からやり続けていることです。また、特に大きな取引が成立したときは、『カガミ新聞』という壁新聞をつくって貼り出しています」という。「高齢者を含め、どうやって従業員を惹きつけていくかを常に考えてきました」という望月社長の元、今後も職場環境整備や教育に取り組んでいく方針である。同社本社の工場に隣接したショップでは、さまざまな製品を展示販売している

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