エルダー2019年5月号
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エルダー25FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫新ジャガイモはビタミンCの宝庫ジャガイモのコロコロ煮これから夏にかけて、店頭に出てくるのが小粒の新ジャガイモ。店頭に並ぶ野菜や果物の色どりが、季節の到来を知らせてくれます。ツバメが飛びまわる姿を見かけるのが、このころです。この時分に小料理屋や居酒屋に入ると、小玉のジャガイモを皮つきのまま、油で炒め煮したコロコロ煮が、よく出てきます。イモはすぐに大きくなってしまいますから、ほんの短い期間限定の、まさに季節の料理といってよいでしょう。ジャガイモは、コロッケには欠かせませんが、肉ジャガやポテトサラダ、家庭でつくるカレーライス、ポテトチップスにも不可欠です。ナス科の多年草で、ジャガタライモ、オランダイモ、馬ば鈴れい薯しょ、五ご升しょういも、お助けいもなどの別名もあります。原産地は南アメリカのアンデス山系の高地で、日本には戦国時代の末期にジャガタラ(現ジャカルタ)からオランダ船によって、長崎に伝えられたといわれ、「ジャガイモ」の呼び名も、ここからきています。ジャガタライモが転じてジャガイモになりました。リンゴより多いビタミンCジャガイモというと、何といっても有名なのが「男爵いも」でしょう。1908(明治39)年、北海道で農場を経営していた川田男爵が、アメリカからアイリッシュ・コブラーという種いもを輸入して栽培したところ、これが見事に成功しました。北海道の土地に合って、よく採れるうえに味もよい。ホクホクした舌ざわりと、クセの無い味が日本人の好みに合い、人気のジャガイモに育ったのです。北海道のある村では1個の種いもから五升もとれたので「五升いも」とも呼ばれたというエピソードがあるくらい、北海道はジャガイモの産地として有名になります。ジャガイモで注目されるのは、加熱に強いビタミンCが100グラム中に35ミリグラムも含まれているという点。ミカンに匹敵する含有量で、リンゴよりもはるかに多く含まれています。ビタミンCは、ご存知のようにウイルスを殺す働きがあり、風邪やガンなどを防ぐ作用としても注目されています。ジャガイモは、高血圧を予防するカリウムが豊富な点も評価されています。308

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