エルダー2019年5月号
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2019.52ミサワホーム株式会社 常務執行役員堤内真一さんりこれまでの経験から得た豊富な事例や専門知識、人的ネットワークをフルに活用できる点で、ベテラン社員ならではの強みがあります。―定年後再雇用の上限年齢を引き上げることで、スキルの高いシニア社員を引き止めるねらいがあるのですね。堤内 従来の制度では、60歳を迎えて再雇用した者は、「嘱託社員」と呼ばれ、給料はそれまでの半分くらいになり、人事評価もしていませんでした。さらに65歳を超えると時給制に変わりました。しかし、会社に貢献できるスキルを持った社員のキャリアを、年齢で途切れさせるのは大きな損失です。 そこで、60歳以降の「嘱託社員」という呼称を「マイスター社員」に改めました。ドイツ語である「マイスター」は、〝巨匠〞や〝名人〞という意味をもつ、ステータスの高い呼称です。そして、60歳到達前の社員も含め、人事評価の成績を反映した給与の幅を広げ、―貴社では2018(平成30)年4月から、定年後再雇用の上限年齢を、65歳から70歳に引き上げました。その理由をお聞かせください。堤内 建設業では今日、設計・施工技術者を中心に人材が逼ひっ迫ぱくしています。50代のベテラン技術者を「第三新卒」と称して採用する会社も現れているほどです。技術者だけでなく営業職でも、ミドルやシニアの人材がほしいという会社が多くみられます。 当社でも、例えばお客さまの高齢化にともない、お住まいのリフォームの注文が増えてきました。家を新築されるのは若い年代のお客さまが中心ですから、当社も同年代の若い社員が担当として対応しますが、リフォームではお客さまの年齢層に合わせて、経験豊かなベテラン社員が対応するほうが、お客さまのご要望に、より的確に応えることができます。 また、法人が所有する土地や建物の有効活用をお手伝いする法人営業の分野でも、やは60歳を過ぎても評価が高ければ給与は下がらない仕組みとしました。 これまで60歳を過ぎてからの再雇用は、福祉的雇用という側面がありました。長く働いてくれたことへのねぎらいの気持ちを込めて、会社が就労の機会を提供するという位置づけです。だから評価もしません。しかし、これでは嘱託社員はモチベーションを保てません。ベテランの働きに大いに期待するからには、きちんと評価し、評価に応じた扱いをして、しっかりパフォーマンスを出してもらう仕組みに改める。こうした考えのもとに、今回の人事制度の見直しを行いました。―再雇用の上限年齢を65歳とする企業が多いなかで、70歳に引き上げたのは、どのようなねらいがあったのでしょうか。堤内 65歳は当たり前。思い切って70歳と打ち出すことで、社員の意識を変えるのがねらいです。70歳までパフォーマンスを落とさずに働くためには、若いうちはもちろん、50歳以降も、スキルを高め続ける意識を持つ必要があります。ビジネスの環境や手法の変化のスピードが増しているなか、ベテランであっても、それまでの成功体験に安住することなく、常に知識やスキルを磨き続ける意識や姿高度な知識やスキルを保有するシニア社員の活躍の場が増えてきた

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