エルダー2019年5月号
40/68

2019.538その仕事に応じた賃金に変わります。このような変化については、安全第一の仕事なので、従業員も納得しているといいます。今回は、同社で働いている60代のお二人からお話をうかがいました。前職の経験を活かして同社の倉庫でフォークリフトを操作し、荷物の搬入・搬出、管理を行っている岡おか田だ常つね郎おさん(63歳)は、食品の卸会社を定年後、62歳で入社。フルタイムで勤務してまもなく1年です。「どのようにすればトラックに積みやすいか、対策の強化にも努めています。55歳ころから仕事を変えていく大型トラックのドライバーは、2m以上の高さがある荷台を上り下りして荷積み、荷縛り、荷下ろしの作業を行うため、身体が機敏に動くことと体力が必要となります。また、長距離運転をする場合、集中力も大切といいます。そのため、「長距離運転の仕事をしているドライバーには、55歳を目安に本人と話し合いながら、近距離の仕事や夜間走行のない仕事に変える、さらに年齢を重ねてからは、クレーンの仕事に変更するなどして、無理なく継続して働けるようにしています。クレーン作業は、大型トラックほど体力が要りませんので、個人差はありますが、75歳まで働いた人もいます」と野角社長。同社の仕事は基本的には一人で担当し、業務量で賃金が決まる日給月給制で、定年後も同じ制度です。定年は60歳。65歳まで希望者全員を再雇用し、65歳以降は条件が合えば継続して雇用します。定年前と同じ仕事であれば、再雇用後の勤務時間、賃金に変化はありません。ただ、定年などを機に本人から「近距離の仕事に変わりたい」と申し出があったり、話し合ってクレーン作業に変わると、ツなどを教えるよう指示しています。従業員数は46人(4人の役員を含む)。そのうち、トラックとトレーラー、移動式クレーンのドライバーが36人と大半を占めています。最高年齢は81歳の元ドライバーで、運転免許は3年ほど前に返納し、現在は倉庫管理を担当しています。野角社長は、「この5、6年で団塊の世代のドライバーが次々に引退し、その後に入社した従業員が10人ほどいます。ドライバー経験があれば60代の人でも採用し、みなさん働き続けていますので、人数は揃っているのですが、20〜30代の入社が少ないので、先々を考えると厳しい状況です」と人材確保のむずかしさについて語ります。常谷プランナーは、同社の状況に対応して、「道路貨物運送業はドライバー不足であることと、同社では今後ドライバーの高齢化が進むことから、高齢ドライバーのさらなる活用に取り組む観点からアドバイスをしています」と話します。また、そのなかで、当機構の「企業診断システム(健康管理)」※を実施し、同社の現状の確認や検討したい課題の整理などを行いました。従業員の健康への配慮について、同社では健康診断にオプション項目をつけているほか、長期出張などハードな仕事を一人の従業員に集中させないこと、朝礼で毎日顔を見ることなどを実施。また、車両に最新の安全設備を搭載するなどの安全フォークリフトで倉庫の荷物を管理する岡田常郎さん※ 企業診断システム…… 高齢労働力の活用に向け企業内で取り組むべき課題と方向性を整理するために開発されたシステム。「職場改善」、「健康管理」、「教育訓練」、「仕事能力把握ツール」、「雇用力評価ツール」で構成される

元のページ  ../index.html#40

このブックを見る