エルダー2019年5月号
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エルダー41を図ることが企業には求められる。 その結果、自ら身につけたスキルは企業の生産性向上への貢献にとどまらず、高齢社員にとって揺るぎない自信となり、さらなるスキルアップへ挑戦意欲を持つなど、職場で活き活き働くことにつながるだろう。 本連載では豊富な経験と知識を持つ高齢社員に学ぶ場の提供や、新たなスキル習得に向けた支援を行い、生産性向上や職場の活性化につなげた取組みを紹介したい。業務の中核をになう高齢社員年齢上限を定めず希望者を雇用 1995年創業の株式会社忠武建基は、深しん礎そ工法を得意とする土木工事会社である。深礎工法とは、橋を支える橋脚や鉄塔の基礎部分を人力で掘くっ削さくして土留めを行い、そこに鉄筋を入れてコンクリートを打設する工法で、ときには数十メートル下まで掘ってコンクリートで固めることもあり、独自のノウハウと長年の実績を持つ専門企業として、業界で知られている。 役職者を含めて30人の会社であるが、70歳の2人を含む8人が60歳以上と高齢社員が大きな比重を占める。そのほとんどが「現場代理人」と呼ぶ工事の管理者を務める。協力会社の作業員に工程を指示し、生コンクリートや資材の手配、発注者との交渉を行うほか、自ら重機の運転をすることもある。工事現場は福島県や愛知県などの遠方も多く、東京都杉並区にある本社にはめったに来ることはなく直行直帰の勤務だ。 建設業界は人材不足だが同社も例外ではない。重責をになう高齢社員のさらなる活躍を期待し、同社では2016年に画期的な制度を構築した。4月に、従来の「60歳定年、65歳までの定年後再雇用制度」を見直し、「65歳定年、定年後は一定条件で年齢上限を定めず継続雇用」する制度に変えた。さらに8月には建設業で一般化している「日給月給制」を「完全月給制」に変更。収入の安定と人材の確保・定着が最大の目的である。 65歳以降の継続雇用についてはすでに70歳の社員もいるが、会社の戦力となる人材であり、本人に働く意欲があれば年齢の上限は設けていない。加えて現役時代と同じ給与(賞与など)が保障される。同社総務部の大沼正典氏は「定年後は1年契約の嘱託となり給与が下がる会社が多いですが、当社は同じ仕事をしていれば定年前と給与は変わりません。やはり報酬が同じであることはやりがいにつながりますし、能力を発揮できる働きやすい環境をつくることが大事だと思っています」と語る。 働きやすさへの配慮は報酬だけではない。いくら元気だといっても現場作業は危険がともなう。高齢社員の安全確保と身につけた知識や経験を活かし、いかに長く働いてもらうかが建設業界の大きな課題になっている。同社が取り組む安全確保策の一つが作業時に装着する保護具の軽量化だ。保護帽や防塵・防毒マスクなど法的に義務づけられている装備品のなかで、体に装着するフルハーネスと呼ぶ墜落制止用器具が最も重い。 「今年の2月から高所での作業はフルハーネスの着用が義務づけられましたが、できるだけ軽量で性能も優れた最新型の保護具を支給する取組みをしています」(大沼氏) それでも年齢を重ねるごとに肉体的負担は増していく。高齢社員の次のステージとして用意しているのが関連会社の株式会社ディッグだ。総務部 大沼正典氏※  株式会社忠武建基は平成29年度高年齢者雇用開発コンテストで高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞を受賞しました。詳しくは本誌2017年11月号をご覧くださいエルダー 2017年11月号検索高齢社員の磨き方―生涯能力開発時代へ向けて―

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