エルダー2019年5月号
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え、大量の批判にさらされた結果、会社の社会的評価を低下させるようなことがくり返されています。このような行為に対して、労働者に対する損害賠償請求などしかるべく法的措置をとることを表明している企業もあり、このようなSNSを通じた炎上により企業に対する信用を毀損した結果として生じた損害については、労働者に対して損害賠償請求を行うことが可能と考えられます。とはいえ、会社の信用を毀損した結果生じた損害が、金銭的な評価としてどの程度であるかを特定すること自体がむずかしい問題でもあることから、損害賠償請求により会社に生じた損害を回復しようとしても十分な損害賠償請求ができるとはかぎりません。さらに、会社の労働者に対する損害賠償請求については、会社が労働者の労務提供を通じた事業活動により利益を得ている以上、そのリスクも甘受すべき範囲があるとの考えから、損害の全額の賠償を認める裁判例は少なく、せいぜい、4分の1から2分の1までの範囲に制限されることが多くなっています。損害が金銭賠償により一部回復されたとしても、失われた信用まで回復するとはかぎらないことも含めて考えると、SNSの利用に対する制限などによって、現代の会社にとって、炎上を予防することの意味は非常に大きくなっているといえるでしょう。インターネット上の書き込みについて1労働者が会社を退職した後に、会社の評判を下げるような書き込みを行ったり、SNSを利用して発信することがあります。労働基準法違反に至っていなくても、他社との比較において相違する点があれば、安易に「ブラック企業」などの表現を用いて、批判がくり広げられることもあります。インターネットに記載された口コミや評判はだれの目にも触れることになるうえ、特に採用活動においては、各企業の評判などを検索したうえで、就職先を探すことも多いため、その影響を甘く見ることはできません。このように会社にとって無視することができない影響をおよぼすインターネット上の口コミや書き込みに対して、会社はいかなる措置をとることができるのでしょうか。プロバイダに対する削除請求2会社の信用を毀損するような内容のインターネット上の書き込みや発信については、プロバイダ責任制限法に基づきインターネットプロバイダを介して、削除請求することができます。インターネットプロバイダとは、書き込みなどが可能となっているサイトにおいては、一般的には運営会社などが該当することになります。書き込みを行った者に表現の自由がある以上、本人以外が当該表現を削除することは控インターネット上の書き込みについては、プロバイダを特定したうえで、削除請求することが可能です。事実と異なる内容によって、会社の信用を毀損していることが前提となるため、事実関係をしっかりと調査することが重要です。A退職者のものと思われるインターネット上の書き込みに迷惑している当社の社内における人事の事情や給与体系などが、インターネット上に書き込まれており、採用活動に支障が出ています。おそらく退職者によるものと思われますが、記載された内容には、事実と異なる内容も含まれているため、非常に迷惑しています。このような記載を削除させることはできないのでしょうか。Q22019.546

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