エルダー2019年5月号
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2019.562フライス盤は、上下する主軸に取り付けた切削刃物を回転させて任意の形に削っていく。長年の経験と職人の勘が試される多く、柄澤さんは旋盤がうなる音を聞きながら半世紀を超える日々を過ごしてきた。「中学を卒業してから旋盤工場に丁でっ稚ち奉ぼう公こうしました。その後はいくつかの現場を渡り歩きながら、多くの先輩から技術を学んできました。汎用旋盤・フライス盤を使って行う作業は、素材にあてる刃物の角度をハンドル操作で微調整していく手仕事です。加工前の素材は肉眼では同じに見えても、切せっ削さく加工中の摩擦などで目に見えないブレが生じるため、加工の段階で微調整を加えなければなりません。1㎜以下の世界を覗きながら夢中で歩いてきました」汎用旋盤とフライス盤を駆使して微細加工の限界に挑む汎用旋盤とフライス盤の違いを優しく教えていただいた。汎用旋盤は加工したい素材を回転しながら切削するのに対して、フライス盤は刃物の方が回転する。柄澤さんはフライス盤で使うドリルの種類を変えながら、回転を微調整する作業を実演してくれた。穴開けに使用するドリルの直径は1㎜以下から4㎝のものまであり、1㎜以下のドリルを測定器で測ってみると「0・58」という数字を示した。1㎜のドリルで開けた穴と、0・6㎜のドリルで開けた穴の差は肉眼では区別がつかない。しかし、製品としてはまったく違うものができあがる。気の遠くなるような誤差と向き合いながら、部品として完成させていく。それは製品というより作品という呼び名がふさわしい。「小径1・4㎜のボルトをつくる際は、自作した工具のホルダーを何度もつくり直して加工しました。そのボルトに0・3㎜のネジ山を加工するためには、汎用旋盤に顕微鏡を設置しなければ加工することができなかったので、製品「金属は膨張すると変形するため寸法通りの切削に苦労します。 経験を重ねても納得のいく仕事ができない奥深い世界です」

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