エルダー2019年5月号
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エルダー63である。さらに、試行錯誤のなかから、部品検査時にマイクロスコープを活用することを思いついた。カメラ機能があり、SDカードによるデータ集積や写真の印刷も可能となった。悩みの種は、年季の入った機械の修理を頼める会社が減りつつあること。また、金属は温度によって膨張と収縮をくり返すため、この温度差の克服が今後の課題だという。「現在は、コンピュータでプログラムされた通りに素材を加工する数値制御︵NC︶方式が増えてきましたが、職人の経験と勘で微調整していく汎用旋盤はまだまだ必要とされています。長年磨き続けてきた技術を若い人たちに伝えていくことも私の役割だと思っています。匠たくみに息い吹ぶきを伝えたい︱。これが私のモットーです」有限会社柄澤精密TEL:03(3750)2419(撮影・福田栄夫/取材・永田佳)として完成させるまでに時間がかかりました。顕微鏡を設置することでその後の加工工程がスムーズになり、1・4㎜のボルトでも強度テストができるようになりました。マイクロスコープを覗いてみてください。ネジの山と山の間が均等に0・3㎜ずつ切り込まれているのがわかりますよ。円筒状にしか見えない部品でも、高精度の切削や穴あけのためには貴重な材料の一部であり、多岐にわたる分野で活躍しています」と語る柄澤さんの表情が緩んだ。旋盤の刃物もすべてオリジナル旋盤工場はアイデアの宝庫工場には汎用旋盤が3台、フライス盤が1台あり、そのなかの1台に顕微鏡が設置されていた。切削のための刃物の先端にピントを合わせられるように柄澤さんが考案した顕微鏡である。旋盤用の刃物︵バイト︶も、すべて手づくり汎用旋盤に顕微鏡を設置、切削のための刃物の先端にピントを合わせるマイクロスコープが小さなねじの山と谷をくっきりと映し出す最小表示0.01mmの測定器で0.6mmのドリルを測定道具へのこだわりから、材料を削り出す刃物(バイト)はすべて手づくり苦楽をともにしてきた妻・栄子さん(左)は旋盤の経験がある

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