エルダー2019年6月号
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2019.68身機能と、それほど低下しない心身機能があるからです。最も大きく低下するのは、「夜勤後の体重回復」です。値は27%。すなわち73%も低下します。高年齢労働者は夜勤が苦手といえます。一方、それほど低下しないのは、「背筋力」、「屈腕力」、「握力」などの筋力で、25~30%程度の低下です。高年齢労働者の心身機能低下のなかで、現場の安全にかかわりの深い機能を以下に示します。①バランス感覚 (心身平衡機能、姿勢のバランス保持)  バランス感覚は20代をピークにその後は急激に低下します(図表2)。②とっさの動き(反応動作、その正確さと速さ)  危険回避にはとっさの俊敏な動きが必要です。全身敏びん捷しょう性は10代でピークをむかえ、その後は急激に低下していきます(図表3)。③視力  目の働きは視力低下のほか、近くから遠く(またはその逆)へ目のピントを調整する力(遠近調整力)の低下、暗い場所での視力(低照度下視力)の著しい低下、明るい場所から急に暗い場所(またはその逆)に移ることによる視力(明暗順応)の著しい低下などがあります。④筋力 a.握力(工具や重量物の把は持じ力)  握力は、20~30歳でピークをむかえますが、手はよく使うため、比較的ゆるやかに低下していきます(図表4)。 b.背筋力(重量物の支えや運搬)  背筋力は、20代後半から30代前半でピークをむかえ、以後は急激に低下していきます。 c.脚筋力(歩行や立姿勢の維持)  脚筋力とは、両脚で踏ん張る力のことです。脚筋力は、20歳以降から急激に低下します(図表5)。⑤柔軟性  現場では、狭いところなどで無理な姿勢で仕事をすることが少なくありません。柔軟性は10代後半にピークをむかえ、40歳以降はゆるやかに低下していきます(図表6)。100(秒)908070605040302010010203040506070(歳)男女図表2 加齢による平衡機能の変化(閉眼片足立ちテストによる)出典:石橋富和:高齢者の心身能力と交通安全(5)(交通安全教育№204.1983.8)、日本交通安全教育普及協会(回)1015202530010203040506070(歳)男女図表3 加齢による全身敏捷性の変化出典:石橋富和:高齢者の心身能力と交通安全(5)(交通安全教育№204.1983.8)、日本交通安全教育普及協会(kg)1020304050010203040506070(歳)男女図表4 加齢による握力の変化出典:石橋富和:高齢者の心身能力と交通安全(4)(交通安全教育№203.1983.7)、日本交通安全教育普及協会

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