エルダー2019年6月号
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2019.610この個人差をみると、実年齢65歳の人であっても、生理的年齢は50代の若々しい人がいる一方、実年齢55歳でも、生理的年齢はすでに60歳オーバーの人もいます。この点を考慮し、高年齢労働者が持つ心身機能に応じた作業員の配置が求められます。3 高年齢労働者の労働災害(1)労働災害発生率高年齢労働者の労働災害発生率はどのようになっているのでしょうか。休業4日以上死傷災害年千人率(1年間の労働者1000人あたりに発生した休業4日以上死傷者数の割合)を年齢階層別にみてみると、「60歳以上」が3・1と最も高く、次いで「20歳未満」が2・7、そして「50~59歳」が2・5と続き、高年齢労働者の労働災害発生率が高いことがわかります(図表9)。(2)労働災害発生状況高年齢労働者の労働災害発生状況について、ハウスメーカーの協力を得て集めた低層住宅建築工事における労働災害発生状況(図表10)をみてみると(ここでは心身機能の低下が顕著に認められる50歳以上を高年齢労働者とします)、全172件の労働災害のうち、50歳以上は74件で43%を占めています。この数字は、50歳以上の労働者が働く割合と同程度で、高いとはいえませんが、個別にみていくと高年齢労働者の労働災害発生率が高いものもあります。例えば、開口部からの墜落、脚立足場上作業での墜落の割合が高くなっており、理由として、高年齢労働者は開いている穴や足場の端部に気づきにくいことが考えられます。また、屋根からの墜落も発生率が高く、屋根のように足元が傾斜で安定しづらい場所は、バランス感覚の低下とともに、脚力が衰えている高年齢労働者は墜落しやすい可能性があります。電動工具についても、研磨するため超高速で回転する反発力が極めて高いグラインダーでの災害の発生率が高くなっており、握力の低下や、危険を回避するためのとっさの動きが低下している可能性が考えられます。(3)労働災害事例(図表11)労働災害発生状況のなかから、高年齢労働者の労働災害事例を示します。先ほど示した心身機能のうち、主にどの機能が低下したことが原因として想定できるのかも、あわせて示します。20歳未満60歳以上20〜29歳30〜39歳40〜49歳50〜59歳02462.72.71.61.61.51.51.81.82.52.53.13.1図表9 年齢階層別休業4日以上死傷災害年千人率(全産業:平成29年)出典:労働力調査(総務省統計局)、労働者私傷病報告(厚生労働省)より図表10 低層住宅建築工事における労働災害発生状況出典:労働安全衛生総合研究所「平成18年低層住宅建築工事会社9社で発生した休業4日以上死傷災害における三大災害の分析結果」災害の種類小区分件数50歳以上割合(%)墜落・転落99件外部足場上作業での墜落18738.9 脚立上作業での墜落15640.0 ハシゴからの墜落12433.3 開口部からの墜落11763.6 脚立足場上作業での墜落66100.0 屋根からの墜落6350.0 違反足場からの墜落6466.7 足場組立・解体時の墜落500.0 外構作業時、基礎等への墜落4250.0 トラックからの墜落3266.7 階段からの墜落3266.7 梁からの墜落300.0 その他7342.9 切れ・こすれ42件電動丸ノコによるもの12433.3 自動釘打機によるもの9444.4 グラインダーによるもの6466.7 その他15320.0 転倒31件基礎・土間での転倒13323.1 床での転倒6350.0 外部足場でつまずき転倒55100.0 その他7228.6 合計1727443.0

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