エルダー2019年6月号
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特集エルダー13高齢社員が働く「現場の安全」を考える①「整理」のポイント高年齢労働者の労働災害で最も多いのは、転倒です。転倒の原因としては、物があふれて通路が狭くなっていたり、通路に物が置いてあることがあげられます。若年者にとっては、つまずいても大きなケガにはなりませんが、高年齢労働者が転倒すると、腰や足の骨を折ってしまい、長期の休業災害につながることもあります。通路に物を置くことを制限し、通路を確保して、その通路には何も置かないようにしてください。また、不要な物が多いと、必要な物を取り出すときに中腰になるなど、無理な体勢が生じやすくなります。②「整頓」のポイント高年齢労働者には視力の衰え(霞かすむ、ぼんやりと見える)があるため、よりわかりやすくする必要があります。例えば、業務上さまざまな種類のボルトやナットなどの小物部品を使用する場合、整頓が不十分だと間違えやすく、また、必要な物を選ぶにも手間取ります。そこで部品ごとに箱に分け、必要な表示をしましょう。その表示もすべて白い紙に黒い文字で表示するのではなく、種類ごとにピンクの紙、水色の紙など色をつけたもので判断しやすくする、あるいは、写真やイラストで表示し一目でわかるようにすることが望ましいです。ただし、例えば青い紙に黒い文字はコントラストの差が少なく、高年齢労働者には読みづらい場合があるため、高年齢労働者の意見を聞きながら、文字色や大きさなど見やすくする工夫をしてください。また、棚に物を置く場合は、安定性を考えて、重い物を下に、軽い物を上に置くことが多いと思われますが、筋力が衰えているため、重い物はある程度高い場所(腰のあたり)に置いた方が持ち上げやすい場合もあります。③「清掃」のポイント通路に物が落ちているとつまずく要因になりますし、床と靴底の間にゴミや埃があると歩くときに摩擦抵抗が小さくなり、滑りやすくなります。また、掃除にホウキとチリトリを使う職場もあると思いますが、しゃがんだり立ったりのくり返しは負担が大きいので、身長にあった掃除機を使うようにしましょう。また、濡れ雑巾を使うときには、床が濡れて滑りやすくなります。特に洗剤が溶け込んだ水は滑りやすくなるため、乾くまでは立入禁止などの表示をして、転倒災害を防止しましょう。また、脚立を使うような高い場所の掃除については、年齢・体力などを考えて、適任者が行うよう指示してください。掃除については、だれが、いつ、どこを、掃除するのか、毎日掃除をする場所、週に一度掃除をする場所、月に一度掃除をする場所など明確にしておきましょう。④「清潔」のポイント不安全状態が労働災害の原因になることが多いため、整理・整頓・清掃のよい状態を維持し図表3 「5S」で現場力アップ出典:筆者作成現場力UP整 理整 頓清 掃清 潔躾

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