エルダー2019年6月号
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2019.618労働災害を防止するためには、あらゆる危険をすべて抽出することが重要です。もし、抽出漏れがあると、その危険にだれも気づかず、対策もなされません。しかしそれでは、危険が現実となり労働災害が発生するかもしれません。では、なぜ抽出漏れが発生するかというと、定められた作業をその通りに実行することを想定して考えてしまうからです。例えば高速回転する機械に触ると危険なことはだれにでもわかります。しかし、定められた手順通りに作業をしていたとしても、手元がズレて回転する機械に手を巻き込まれてしまったり、あるいは機械が止まっていると勘違いして不用意に近づいてしまうこともあるのです。さらには、通路に置いてあるものにつまずいて、思わず回転部分に手を入れてしまうこともあります。●第2ラウンド 〔これが危険のポイント〕の進め方第2ラウンドでは、第1ラウンドで特定した危険の「重大性」を評価します。このラウンドでは被災の程度、可能性を鑑かんがみて、何が重要なのかを絞り込む判断力を伸ばす目的があります。実施の際に気をつけなければならないことは、過去の労働災害やヒヤリハットなどのケガの程度を元に評価するのではなく、〝最悪の状態を想定〞して評価することです。状況によっては、若年者であればヒヤリハットですむ内容であっても、高年齢労働者だと結果が異なる場合があります。例えば、脚立の昇降時に足を滑らせて転落した場合、若年者であれば打撲、重くても捻ねん挫ざ程度ですむ場合であっても、高年齢労働者の場合は、落ちる瞬間の受け身が間に合わず、腰から落ちて骨折するということもありえます。また、体力差もありますので、「力の弱い人だったら」、さらには「身長が低い人だったら」など、作業者によって重大性が異なることもあります。自分中心に考えるのではなく、さまざまな年齢層、経験などを考慮して評価してください。●第3ラウンド 〔あなたならどうする〕の進め方第3ラウンドは実行可能な対策方法を考えるための、問題解決能力を高めることが目的です。例えば、作業で使用する道具や材料の持ち方を変えるだけでも、安全性が高まることもあります。メンバーの発想力を引き出すように、多くのアイデアを出して、最善の方法を考えましょう(図表4)。その際、高年齢労働者であっても作業が安全かつ簡単にできる方法を考えるのが望ましいことはいうまでもありません。また、安全性を考慮して対策を考えても、その対策が作業者の手間を増やすような場合は、ルールが守られないということに気をつけてください。例えば、瓦を500枚運ぶ作業で、台車から崩れ落ちたり、重たくて腰を痛める危険性を鑑み、その対策として「1枚ずつ手で持って運ぶ」という対策を決めたとしても、そんな面倒な作業は実行されないものです。●第4ラウンド〔私たちはこうする〕の進め方第4ラウンドでは、全員が合意した作業方法を確実に行えるように、重点実施項目を定め、実際に現場で確認する指差し呼こ称しょう項目を定めます。重点実施項目と指差し呼称項目を3回指差図表4 第3ラウンドでは参加者のアイデアを引き出す

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