エルダー2019年6月号
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特集エルダー19高齢社員が働く「現場の安全」を考えるし唱和で確認し、安全意識を高める目的があります(図表5)。KYT基礎4ラウンド法の展開また、KYT基礎4ラウンド法で結論づけた作業改善は、ほかの作業に応用できないかを検討して、ここでのトレーニングだけにとどめず、職場の改善活動に結びつけましょう。さらにはリスクアセスメントにも展開して、本質安全※3対策につなげていくことは、作業の安全だけでなく、高年齢労働者にとっても働きやすい職場づくりにつながることでしょう。危険を予知するためには、高年齢労働者や若年者、作業に不慣れな人の行動を考慮する必要があります。労働安全衛生法第62条「中高年齢者等についての配慮」では「事業者は、中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たって特に配慮を必要とする者については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行なうように努めなければならない」と定めています。KY活動もこれに準じて進める必要があります。KYTではイラストを見て危険な箇所・作業を見つける練習をしますが、そのときに作業者が高年齢労働者だったらどのような危険箇所や危険な作業があるのかを考慮してリスクを抽出することが、高年齢労働者の危険に対する感受性を高めることにつながります。例えば、通路と作業場の照明が極端に違うと、明るい作業場からドアを開けて通路に出るととても暗く感じ、通路がよく見えない場合や、暗い通路からドアを開けて明るい作業場に行くと、明るすぎて逆に見にくいと感じる場合もあります。ベテランの作業者は長い経験から自らを過信する傾向もありますが、昔といまでは身体能力が異なるのでその対策が必要です。高年齢労働者が安全に、快適に、速くできる作業は、だれにとっても最適な作業になるはずです。結び・KYTの目ざすもの①感受性を鋭くする/KYTは、危ないことを危ないと感じる感覚、危険に対する感受性を鋭くします。②集中力を高める/KYTはかぎられた時間内で、イラストシートなどを使って職場や作業の危険を見つけ出したり、対策を考え出す必要があることから、その過程で集中力を養うことができます。また、危険なポイントで指差し唱和をすることで集中力を高めます。③問題解決能力を向上させる/KYTは、気づいた危険に対して、具体的で実行可能な対策を出し合い、さらに重点実施項目の絞り込みを行うなかで、危険に対する問題解決能力を向上させます。④実践への意欲を強める/KYTは、危険に対するホンネの話合いのなかで、〝ヤロウ、ヤルゾ〞などの実践活動への意気込みを強めます。⑤職場の風土づくり/KYTは、安全を先取りし、全員が参加して明るく活き活きとした「ゼロ災」職場風土づくり、安全意識の向上、コミュニケーションの活性化につながります。※3 本質安全……機械類が故障しても、人間が間違えても、危害が人間におよぶのを防ぐことに関連した安全確保の考え方図表5 指差し唱和で安全意識を高める

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