エルダー2019年6月号
22/68

岩崎明夫産業医科大学産業生態科学研究所作業関連疾患予防学非常勤助教2019.620職場巡視の意義と目的職場巡視は、現場の安全衛生対策の基本です。職場巡視では、作業状況や職場環境を実際に見ることで、安全衛生上の問題点を見出し職場改善につなげていくことを目的としています。事業者は産業医に対して、職場巡視を実施する機会と情報を提供しなければなりません。産業医としても、作業の現場を実際に訪問して定期的に巡視することで、作業環境管理、作業管理、並びに健康管理を関連づけることが可能となり、適正配置の判断などに活かすことができます。特に高年齢労働者において多発する「転倒」、「墜落・転落」、「はさまれ・巻き込まれ」などの安全面、「腰痛」、「熱中症」などの衛生面に関する労働災害の防止や高年齢労働者にとって安全で健康的な快適職場づくりは、非常に重要な観点です。このため、産業医においては月1回︵一定の要件下では2カ月に1回︶、衛生管理者においては週1回の職場巡視が労働安全衛生法、および労働安全衛生規則に規定されています。また、これらの職場巡視では、安全衛生委員会や各職場巡視時に互いの情報や巡視結果を共有しておくことで、産業医・衛生管理者の双方にとっても、より充実した職場巡視となります。職場巡視の実際職場巡視実施の全体の流れを図表1にまとめました。職場巡視はPDCAサイクルを意識して、職場巡視の計画、実施、評価、改善という全体の流れに沿って行います。職場巡視を「実施するだけ」にせず、PDCAサイクルのなかで職場改善までつなげることが大切です。職場巡視のPDCAには、「PLAN︵計画︶」として年間の職場巡視計画の立案や実際の職場巡視の準備、「DO︵実施︶」として職場巡視の実施や職場巡視の記録、「CHECK︵評価︶」として改善事項についての計画や報告の提出、「ACT︵改善︶」として職場の改善、安全衛生委員会への報告・審議、残存リスクへの対応計画などがあります。実際の巡視では、製造業を例にとると、産業医や衛生管理者が職場環境や作業内容を理解しやすいように、職場の担当者が同行して作業工程や作業内容について説明をしながら、職場巡解 説3高年齢労働者の安全と健康を守る「職場巡視」

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る