エルダー2019年6月号
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特集エルダー21高齢社員が働く「現場の安全」を考える視を行います。産業医にとっては、職場巡視のときに初めて訪問する現場の場合、見回りのように巡視するだけでは、安全や健康のリスクのポイントを理解するには不十分になりがちです。そのようなときに、作業工程・作業内容に関する資料の説明を聞きながら、職場を見ることで、工程への理解や巡視のポイントが明確になります。高年齢労働者に適合した職場環境を確保するためには、職場巡視のチェックリストを用意して、職場巡視時にそのリストをもとに巡視しながらチェックしていくと、漏れのない効率的な巡視にもつながります。ただし、作業に毎日従事する労働者や職場の管理者は、日常作業への慣れや多忙さなどから、職場のリスクや改善すべき事項に気づかなかったり放置してしまうことがあるため、現場の労働者・管理者とは異なる視点で巡視し、チェックリスト以外の内容でも必要に応じて指摘することも大切です。また、残業や出張などの情報も、職場を理解するうえで産業医にとっては有用な情報ですので、職場巡視の機会に管理者や職場同行者に確認してもよいでしょう。職場巡視の注意点としては、特に製造現場の巡視では、「労働者が立ち入る場所は原則としてすべてを巡視対象とすること」、「巡視中は作業環境や設備面の確認とともに労働者の実際の動きや行動範囲、具体的な作業内容まで可能なかぎり観察すること」、「定められた保護具の未着用など明らかな指摘事項は職場同行者や衛生管理者と相談してその場で指摘すること」、「高年齢労働者が担当する実際の作業内容も過重性や危険性の観点から確認すること」、「労災につながりやすい非定常作業にも留意すること」などがあげられます。巡視後には、職場巡視同行者と職場巡視のまとめの会合をすぐに行いましょう。そこでチェックリストの結果の照合や巡視時に気になった点の確認も行います。気になった点は職場同行者の説明を受けて解決することもあるでしょうし、解決すべき課題として改善の指摘につながることもあります。改善点がある場合に、具体的にどのように改善したらよいか、どのレベルまで改善すべきか、コストバランスのよい対策はないか、といった点で判断に悩む場合があります。特に中小規模図表1 職場巡視とPDCAサイクル出典:筆者作成PLAN(計画)1.職場巡視計画の策定 □年間職場巡視計画の立案 □安全衛生委員会での計画の審議 □重点巡視テーマの策定 □臨時の職場巡視の計画(作業環境測定結果、リスク低減対策の確認、新規作業開始時)2.職場巡視前の準備 □作業工程や作業内容の確認 □有害物取扱いの確認 □作業環境測定結果、特殊健診結果、特定業務従事者健診結果の確認 □作業用の各種機械の確認 □巡視用チェックリストの準備(テーマ別巡視等)3.巡視職場との日程や同行者の調整 □産業医の出務日と職場巡視の日程等調整 □職場側同行者の日程等調調整DO(実施)4.職場巡視の実施と実施後の打ち合わせ □作業環境管理、作業管理、健康管理の視点を結びつける □テーマ別チェックリストを用いて巡視する □機械などは稼働時にも巡視する5.巡視報告書の作成 □改善を要する事項を指摘する □Good Practice(優れた取組み)について積極的に良い点として指摘するCHECK(評価)6.改善事項についての計画や報告の提出 □職場側から改善した事項についての報告 □予算化を要する等継続検討事項についての計画ACT(改善)7.安全衛生委員会での報告・審議 □安全衛生委員会での報告・審議事項として記録する □巡視報告と改善対応の検討8.残存リスク等の管理計画の策定 □対策後にも残存リスクがある場合の管理計画の策定

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