エルダー2019年6月号
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特集エルダー23高齢社員が働く「現場の安全」を考える高年齢労働者に多発する労働災害防止に役立てることができます。図表7には、「エイジアクション100」をもとにした「転倒防止のチェックリスト」の例を示します。そのほか、エイジアクション100を参考にして、職場の状況に合わせて巡視用のチェックリストとして活かしましょう。また、高年齢労働者においては、作業開始前の準備体操、身体的負荷の高い作業の調整、作業ペースや作業量のコントロール、適切な休憩時間などの作業管理は大切であり、職場巡視時にヒアリングを行うことで確認できます。保護帽など、定められた保護具の不着用が、万が一の転落事故時に重傷につながることも多く、それらの準備とともに、日ごろからの適切な安全衛生教育の実施、着実な作業管理の実施も不可欠です。労働者の健康確保のためにも、作業管理の状況も職場巡視では確認したいものです。おわりに職場巡視は衛生委員会活動とともに、安全衛生の基本の活動です。定例の活動であるがゆえに、マンネリ化しやすく、職場巡視がおざなりとなっていることもあります。産業医にとっても、最初は戸惑う面もありますが、毎月くり返すことで巡視にも慣れ、職場の安全確保の意識が高まります。また、職場巡視では職場改善の指摘に注力しますが、一方で適切に対応できている部分を「Good Practice」として前向きに評価することも大切です。よくいわれることですが、高年齢労働者が働きやすい職場は、安全で健康的に働ける快適職場であることが多く、職場巡視の活用により、その実現に近づくことができるでしょう。図表5 濡れている床で滑って転倒図表6 脚立の不適切な使用図表7 現場作業における転倒防止のための職場巡視 チェックリスト例出典:中災防「エイジアクション100」を元に筆者作成通路に十分な幅を確保している。通路、階段、出入口には物を放置していない。足元の電気配線やケーブルはまとめている。床面の水たまり、氷、油、粉などは放置せず、都度取り除いている。階段、通路は十分な明るさ(照度)を確保している。階段に手すりを設けている。通路の段差がない。ある場合は表示などの注意喚起をしている。滑りやすい場所に滑り止めを設けるなどの設備改善を行っている。作業現場に適した耐滑性があり、つまずきにくい作業靴を着用している。書類や携帯・スマホなどを見ながら歩く、「ながら歩き」を禁止している。ポケットに手を入れた「ポケットハンド」での歩行を禁止している。「廊下を走ること」を禁止している。ヒヤリ・ハット情報を活用して、転倒しやすい箇所の危険マップなどを作成・周知している。

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