エルダー2019年6月号
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エルダー39く、相談内容について人事部は一切関知していない。人事や上司以外の軸で本気でキャリアに向き合う機会が提供されている。そのうえで将来のキャリアを考え、新たな経験や知見を獲得する制度として兼務案件を公募する「キャリアプラス」と、新たなスキル取得を金銭的に支援する「Re-Creationファンド」がある。社内兼業「キャリアプラス」で本業のパフォーマンス向上にも期待ソニーは社内求人募集に応募して部署間を異動する「公募制度」を1966(昭和41)年に導入しているが、キャリアプラスに応募して採用されると、現部署の仕事を継続しつつ、業務の1~2割程度をほかの部署のプロジェクトなどの業務と兼務する。現部署の上司の許可を得て応募し、兼務の際は各部署と調整し、週1~2回といった一定の曜日や1日の労働時間など、働き方を決める。制度の目的について、大塚統括部長は「経験や知見を広げ、能力向上につながる兼業・副業の社内版」と位置づける。「従来の公募制度は完全異動ですが、ベテラン社員にとっては重要な選択ですし、慎重になる人もいます。そこで1~2割を新しい仕事に割くのであればやってみようという人が増えるのではないかと考えました。同じ部署にずっといると、自分にどの程度の能力があるのかが見えにくいのですが、違う仕事を経験することで自分の市場価値に気づくこともできます。そこで頼りにされると、キャリアに対する意識も芽生え、本業にも活かそうとするかもしれないし、新しいチャレンジをしてみようという動機づけにもなり、仕事のパフォーマンスにもよい影響を与えることを期待しスタートしました」制度がスタートして約2年が経過した。1件の募集に複数名採用されることもあり、利用者は累積で約100人に達する。仕事の内容は大きく分けると、①仕事以外の趣味・特技を活かした業務、②新規ビジネスのサポート、③全社プロジェクトの三つに分類されるという。①の例として、ソニーの商品にアニメーションの要素を採り入れたらマーケットニーズがあるのではという発想でメンバーを募集したところ、若手やベテランが多数集まり、プランニングした商品が実際に発売された。「その職場の人がアニメを勉強するより、アニメが好きな人が参加したほうが、より良い企画や商品につながる可能性が高いですし、本人も趣味を仕事に活かすことができるのでモチベーションの向上につながる面もあると思います」(大塚統括部長)比較的小さい新規ビジネスにおいては予算の関係から人を固定的に雇うのはむずかしい。しかもユニークなアイデアや発想を事業として軌道に乗せるには経験者の能力も必要だ。キャリアプラスを活用することで「若い人のアイデアを製品化して期日までにリリースできるベテランの力を借りたいという案件がけっこうある」(大塚統括部長)という。また、全社プロジェ左から山下弘晃キャリアサポートマネジャー、大塚康統括部長、岡島寛明氏高齢社員の磨き方―生涯能力開発時代へ向けて―

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