エルダー2019年6月号
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整としての機能や、専門的な領域における能力を図るために比較的長期の雇用を行う場合など、有期雇用であるからこそ雇用するという場面があります。このような場合に、契約期間満了を実現するために、さまざまな工夫をしている使用者がいます。更新手続きの実施方法について2有期雇用の更新方法については、法律上その方法について明確には定められていません。そのため、自動更新に近いような形で更新することも可能です。しかしながら、前述の通り、実質的無期契約型となった場合には、無期労働契約と同様に有期労働契約を満了する際に、当該労働者に対する雇止めの効力が規制されることになります。有期労働契約としての効力を維持するためには、更新時の手続きを形式的なものにせず、厳格化する必要があります。具体的には、有期労働契約の更新時において、きちんと書面を交わしなおすこと、更新の際に説明を尽くして有期労働契約の更新基準を労働者に理解させることが重要です。更新基準については、実質的な基準として機能させなければならず、過去に更新基準に即した雇止めの事例が存在するか否かということも重視される傾向にあります。更新回数や更新期間の上限設定について3無期転換ルールが定められたことも一因と思われますが、有期労働契約において、更新回数の上限や更新期間の上限を定める例が増えているように見受けられます。これらの上限を設けることが、有期労働契約を満了させることに役立つのでしょうか。高知地裁平成30年3月6日判決(高知県立大学後援会事件)は、就業規則において「契約職員の雇用期間は、1会計年度内とする。ただし、3年を超えない範囲において更新することができる。」と定めていた事例について、「就業規則において、契約職員の通算雇用期間の上限を3年と明確に定めていたこと」、「有期雇用契約を更新する場合も、管理職による意向確認や契約期間を明記した労働条件通知書の交付といった手続をとっていたこと」、「原告の契約の更新回数は2回にすぎず、通算雇用期間も3年にとどまっていたこと」、「原告の給与計算を主とする業務は、(中略)、ルールに従って一定の処理を行うもので、(中略)、代替性が高いもの」などを考慮のうえ、労働契約法第19条2号の合理的な理由のある期待があったと認めることは困難としました。最高裁平成28年12月1日判決においても、「3年を限度に契約を更新することがある。」と定められている事案について、契約期間の更新限度が3年であることが明確に定められており、このことを労働者も十分に認識していたうえで労働契約を締結したものであることから、「更新限度期間の満了時に当然に無期労働契約となることを内容とするものであったと解することはできない」とされています。ただし、この事案については、契約期間が試用期間としての機能も同様に果たしていたことや大学の講師としての業務であったという特徴もあったため、その点にも留意すべきとの補足意見も付されています。更新手続きが厳格に行われていたことも重要な要素とはされていますが、更新期間の上限を定めておくことで、合理的期待を生じさせにくくする要素として機能することがあること自体は広く肯定されています。高年齢者と更新制限について4さらに、最高裁平成30年9月14日判決においては、満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨を定める就業規則の有効性について判断されました。更新回数が多数回にわたるような有期労働契約も含めて当該規定の適用を受ける可能性があるという点に特徴があります。同判決においては、「期間雇用社員が屋外業務等に従事しており、高齢の期間雇用社員エルダー43知っておきたい労働法AA&&Q

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