エルダー2019年6月号
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について契約更新を重ねた場合に事故等が懸念されること等を考慮して定められたものであるところ、高齢の期間雇用社員について、屋外業務等に対する適性が加齢により逓てい減げんし得ることを前提に、その雇用管理の方法を定めることが不合理であるということはできず、被上告人の事業規模等に照らしても、加齢による影響の有無や程度を労働者ごとに検討して有期労働契約の更新の可否を個別に判断するのではなく、一定の年齢に達した場合には契約を更新しない旨をあらかじめ就業規則に定めておくことには相応の合理性がある。」として、上限年齢を定めること自体の有効性を肯定しました。当該上限規制が有効であることを理由に、実質的無期契約型と認めず、更新手続きも65歳以上の更新がない旨の説明書面が交付されていたことなどを考慮して合理的期待型とも認めず、有期労働契約が終了していると認めました。最高裁判決の事案においては、有期労働契約に上限年齢を定めることの合理性については、体力の低下と業務内容のほか、事業規模による個別判断の困難性をあげているため、すべての使用者にとって同一の判断がされるとはかぎりませんが、定年制自体の合理性が否定されないかぎりは、有期労働契約の上限年齢の効力も肯定されやすいとは考えられます。相続と相続放棄について1「相続」という言葉は一般的にも理解されているかと思いますが、その制度に関する全体像を把握されているわけではないでしょう。配偶者が2分の1を相続し、子どもが残りの2分の1を分け合うということは、よく知られているでしょう。しかしながら、すべての人が相続財産を引き継ぎたいと思っているわけではありません。相続の対象となるのは財産ばかりではなく、債務、典型的には借金なども承継することになるからです。例えば、質問にあるように、消費者金融の借入金がたくさんある場合には、相続をすることでむしろ残された遺族の財産までも借金の返済に充てなければならなくなってしまいます。このような場合に用意されている制度として、相続財産の範囲で債務を弁済して残余財産が生じる場合にのみ相続をする「限定承認」という制度や、相続財産と債務のすべてを一切相続しないことを選択する「相続放棄」という制度があります。これら以外のいわゆる一般的な財産も債務も承継する相続を行うことを「単純承認」と退職金規程の定め方次第で、結論が大きく異なりますので、しっかりと確認してください。支給対象者が、「配偶者」など個別に定められている場合には、相続財産には該当しないため、支給しても相続放棄には影響しない場合もあります。なお、支給対象者が「相続人」などになっている場合には、相続放棄をした方の次順位の相続人を調査して支払う必要があります。A2019.644従業員の死亡退職金の支給を相続人が受け取らないと申し出てきた当社では、従業員の死亡時に退職金を支給する旨を定めています。このたび、亡くなった従業員の相続人が、「相続放棄を行うので退職金を受け取ることができません」と申告してきました。事情をうかがうと、消費者金融から多数の借入れをしていたようであり、到底返すことができないので、相続放棄をするほかないというのです。当社は、退職金を支給する必要はないと考えてよいのでしょうか。Q2

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