エルダー2019年6月号
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2019.656※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「本体価格」(消費税を含まない価格)を表示します清水克かつ洋ひろ、谷口明あき丈たけ、関口定てい一いち 編/中央大学出版部(中央大学企業研究所研究叢そう書しょ40)/4000円+税労務行政研究所 編/労務行政(労政時報選書)/4600円+税団だん塊かいの世代の仕事とキャリア―日本の大企業における大卒エリートのオーラル・ヒストリー65歳定年に向けた人事処遇制度の見直し実務少子高齢化の進展にともなう人手不足の深刻化、そして2025年度からの年金支給開始年齢の引上げなどを見すえて、65歳定年制への移行が加速化している。本誌でも、「リーダーズトーク」に、65歳定年制を実現した企業の担当者に登場していただき、65歳定年制の実現に向けた取組みを紹介してきたので、こうした状況はご理解いただけるだろう。このような状況に対応すべく、本書は65歳定年制への移行を本気で検討している人事労務担当者向けにまとめられた。65歳定年制の実現のためには、企業には新たな対応が求められる。そこで本書は、どのようなステップで各種制度を整備し、また改定すべきかに焦点を当て、専門家が多角的な視点から解説している。第1章「高年齢者雇用の現状と最近の高年齢者雇用をめぐる動き」から、第8章「65歳定年制導入企業の事例」まで、いずれの章の解説も企業の実務に直結した内容が取り上げられている。なかでも、第4章「65歳定年制への移行実務」と、東洋インキグループなど3社の65歳定年制導入企業の事例を収録した第8章は、企業の人事労務担当者にとって示唆に富む内容であり、ぜひご一読いただきたい。1947(昭和22)年から1949年にかけて生まれた「団塊の世代」は、約800万人という数の多さとともに、戦後の日本経済を支えた世代として知られている。その団塊の世代全員が70代を迎えようとしており、人生の新たなステージにふみ出し始めている。こうした時期をとらえ、中央大学企業研究所では、団塊の世代のオーラル・ヒストリー※をまとめるプロジェクトに取り組んだ。本書はその成果物として出版された書籍である。本書は、団塊の世代に属する5人のオーラル・ヒストリーととともに、その内容を受けた3人の研究者による「団塊の世代の仕事とキャリア論」、そしてその内容に対するディスカッションを主な内容としている。同じ大学を卒業し、総合電機メーカー、総合化学メーカー、総合商社、長期信用銀行、自動車メーカーに勤めた5人によるオーラル・ヒストリーからは、日本的雇用慣行の下、厳しい競争を勝ち抜きながら、組織内キャリアを自ら形成していった実態が語られている。人事労務担当者向けの実用書とはスタンスが異なるが、生涯現役で働くためのキャリア形成を考える機会となる好著である。戦後の日本経済を支えた人たちの証言集「高齢者雇用にどう対応すべきか」を多角的な視点から解説※ オーラル・ヒストリー……口述歴史。歴史研究のため、関係者から直接話を聞き、まとめた記録

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