エルダー2019年6月号
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エルダー57慶けい谷や淑よし夫お・慶けい谷や典のり之ゆき 著/経団連出版/1500円+税佐藤和夫 著/あさ出版/1400円+税氏うじ家いえ幹みき人と 著/草そう思し社しゃ(草思社文庫)/850円+税本書は、江戸時代に生涯を送った3人の男性の「老いの風景」を紹介している。隠居後の生活を記録した史料を歴史学者の視点から丹念に読み込むことで、普遍的な老いの風景を浮かび上がらせているところに特徴がある。童門冬二氏と永山久夫氏の連載を楽しみにしている本誌読者にとっては、異なる視点から見た「江戸人の老い」の問題を目のあたりにすることができるだろう。本書に登場する、3人の江戸人のうちの1人は、江戸幕府の歴代将軍のなかでも知名度が高い、八代将軍・徳川吉よし宗むね。「暴れん坊将軍」として時代劇ドラマに登場していたので、江戸幕府中ちゅう興こうの祖そとして活躍したことがよく知られている。そんな吉宗にも容赦のない老後が待ち受ける。脳のう卒そっ中ちゅうによって身体が不自由になり、そこから脱却すべくリハビリに取り組む様子が記録されているのだ。ほかにもさまざまなエピソードが紹介されており、高齢者をめぐる問題は古くて新しいことが実感できるだろう。なお、本書は2001年に刊行された書籍を文庫化したもの。人生100年時代の生き方が取りざたされるようになったいま、一読する価値がより高まったと思われる。童話のようなタイトルが印象的な本書は、2012(平成24)年に「第2回日本でいちばん大切にしたい会社大賞・審査委員会特別賞」を受賞した「徳とく武たけ産業株式会社」の奮闘と、同社の経営姿勢、職場の様子などを紹介している。同社は、高齢者や障害者向けのケアシューズを製造・販売する香川県さぬき市の靴メーカー。従業員71人、売上24億2800万円(2017年7月期)である。1957(昭和32)年の創業時は手袋を製造し、後にスリッパ製造も手がけて売上げを伸ばしたが、紆う余よ曲きょく折せつを経て、「雇っている従業員やその家族のために、自社ブランドを持って独立型の経営をめざそう」と方向転換を決意。苦心の末に開発したケアシューズは、やがてその分野のトップブランド商品となる。経営者は、常に困っている人の立場に立ち、日本の靴業界で初めて片足販売を実施した会社としても知られる。従業員への対応についても、実にこまやかな配慮をしている。巻末には、「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズの著者・坂本光こう司じさんが「『どう生きる・どう働く』を、日夜考えて生きている誠実な人々に、さらなる夢と希望を与えてくれる好著」と本書を紹介している。職業人生の長期化やダイバーシティの浸透により、職場ではさまざまな人々が働き、その働き方や意識はますます多様化している。それにともない、労務管理上の課題やトラブルも多様化、複雑化する傾向がみられる。会社が終わってからアルバイトをしている者にどのように対処すべきか、裁量労働制適用者の労働時間管理はどうすべきか、年次有給休暇を請求された日に休まれると会社に都合の悪いときにはどのような措置をとったらよいのか……。日々発生する課題に対し、職場の管理・監督者はその取扱いに悩むことが少なくない。本書は、職場の管理・監督者が、トラブルを未然に防ぐ、あるいは解決にあたり考慮すべき労働法上の諸問題について考察し、これだけは知っておきたいという労務管理のポイントをわかりやすく説いている。第5版は「働き方改革関連法」に対応した内容で、「年休の確実な取得」、「高度プロフェッショナル制度」、「勤務間インターバル」、「不合理な待遇差を解消するための規定の整備」などの解説もある。管理・監督者や実務担当者はもとより、労働法の基礎知識習得のための社内研修用テキストにも適している。江戸人の老い神様がくれたピンクの靴管理者のための職場の労働法 第5版3人の隠いん居きょの記録から江戸時代の高齢者の生活を読み解く生き方や働き方について、立ち止まって考えたくなる一冊働き方改革関連法に対応、知っておきたい労務管理の急所をわかりやすく解説

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