エルダー2019年6月号
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高年齢労働者の労働災害防止 ―加齢にともなう心身機能の低下―独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 安全研究領域長  高木 元もと也や特集エルダー7高齢社員が働く「現場の安全」を考える1 はじめにわが国では高齢化の進展に加え、高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置の義務づけなどにより、今後も高年齢労働者の増加が一層進むものと予測されています。一方、労働災害発生状況をみると、休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の労働者の割合は増加傾向にあり、2017(平成29)年においては、4人に1人が60歳以上という状況になっています。加齢にともない心身機能が低下し、それにより労働災害が発生する。それはいったいどういうことなのでしょうか。また、どのような対策が求められるのでしょうか。本稿では、これらをテーマに、労働災害につながりやすい心身機能の低下にはどのようなものがあるのか解説するとともに、高年齢労働者の労働災害の発生状況、高年齢労働者の安全対策の考え方などについて解説します。2  加齢にともなう心身機能の低下とは加齢にともない低下する心身機能には、さまざまなものがあります。図表1は、さまざまな心身機能をレーダーチャートで表したものです。20~24歳(ないし最高期)を100として、55~59歳では、どれだけ低下するかを示しています。55~59歳のラインをみると形がいびつであることがわかります。それは、大きく低下する心総 論775759717785858575807563928570633644354866682753596376字を書く速さ運動調節能学習能力計算能力比較弁別能分析と判断能力動作速度タッピングテンポ瞬発反応全身跳躍反応単一反応速度握力屈腕力背筋力伸脚力脊柱前屈脊柱側屈肩関節視力薄明順応聴力皮膚振動覚平衡機能傷病休業を少なく止める能力記憶力夜勤後体重回復抗病回復力図表1 20~24歳ないし最高期を基準としてみた55~59歳年齢者の各機能水準の相対関係(%)出典:斎藤一、遠藤幸男:高齢者の労働能力(労働科学叢書53)、労働科学研究所、1980

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