エルダー2019年7月号
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2019.78けたいという高齢者が増えており、高齢者雇用への期待が高まっているのです(図表2)。政策としても高齢者雇用が推進されています。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)は企業に対して①65歳までの希望者全員再雇用、②65歳以上への定年延長、③定年の廃止、のいずれかの選択を求めています。また、最近では政府の「未来投資会議」が、働きたい高齢者の70歳までの就業機会確保を企業に求めています。これからは、60歳はもちろん、65歳を超えても働くことを希望する高齢者に、企業が就業機会を与えることがますます必要となってくるのです。さまざまな面から高齢者雇用が求められている企業ですが、現状では約8割の企業が60歳定年制を維持しながら希望者全員を年金支給開始年齢まで再雇用する仕組みを選択しています。その理由として、年功賃金がまだ主流の企業では、定年を60歳から65歳に延長すると人件費が企業の重荷になるほか、高齢者に対する一般的なイメージ(体力や能力の低下)から、労働力としての高齢者に疑問を抱いている企業もあるからです。時代の趨すう勢せいからすれば、高齢者雇用は世の流れになっています。現状では高齢者雇用に消極的な会社でも、これからは避けては通れないのではないでしょうか。そうであれば、いまから方針転換して高齢者雇用の推進にかじを切ることが必要です。またすでに積極的な会社であれば、効果を生むための施策をいままで以上に進めていくべきでしょう。高齢者を知る高齢者雇用を進めるのであれば、まず「高齢者や高齢期に近い社員とは、どのような人たちか」を理解しなければなりません。みなさんの会社にも、さまざまなタイプの方々がいらっしゃるのではないではないでしょうか。高齢者の特徴、それは強みも弱みもあり、しかも人によって強みや弱みの有無とそのレベルがさまざま、ということです。まず高齢者の強みは何かを見ていきましょう。高齢者の強みとは、それまでつちかってきた知識や経験が豊富で、高いレベルの技術や技能で仕事ができるということです。製造現場の人たちならば若手にはできないレベルの正確さや精密さで部品をつくり上げるでしょうし、営業であれば豊富な人脈や知識を駆使して巧みなセールストークで商談をまとめていくでしょう。プロジェクトのリーダーであればプロジェクト管理の達人として期限内の業務遂行を図ると同時に、経験の浅い若手メンバーの育成もしっかり進めているでしょう。それだけではありません。彼らは仕事への取組み方や態度、社会常識などの点で若手のお手本にもなります。一方で、高齢者には弱みもあります。多くの高齢者には、加齢の影響が現われます。体力が低下して重いものが持てなくなる、視力が低下して細かい字が読めなくなる、動作に俊敏さが欠けて作業スピードが落ちてくることもあります。意欲が低下して新しいものを学ぶことがむずかしくなる、仕事を前向きにとらえにくくなるといった人も出てくるでしょう。そして、高齢者の多様性です。ここまで説明してきた高齢者の強みと弱みは一般論です。強みにしても弱みにしても、それらを持つ人も持たない人もいます。年齢とともに弱みが顕著に現われる人もいれば、まったく現れない人もいます。高齢になってもそれまでと変わらず同じペースで仕事ができる人、新しいものを積極的に学んで、いままで以上に仕事の質を高める高齢者もいます。高齢者自身が多様化していくのです。「高齢者が多様化する」という、もう一つの意味は、人生や生活のなかでの仕事の意味合いやバランスが変わってきて、しかもそれが人によってさまざまであるということです。いまま

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