エルダー2019年7月号
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特集エルダー9あなたの会社は大丈夫? トラブルから学ぶ高齢者雇用入門で通り仕事一筋の人もいれば、家族の介護、孫の世話、地域活動への参加などによりフルタイムでの勤務がむずかしくなる人も出てきます。体力や健康との関連では、通院のため仕事を減らす場合もあるでしょう。高齢者の〝弱み〟を補い〝強み〟を活かす高齢者雇用を進めるうえでぜひとも考えていただきたいのは、高齢者の持つ「強み」を活かすために、彼らに「弱み」が出てくればそれを補う工夫をし、一方、高齢者の多様性に対してはさまざまなメニューを用意して対応するということです。体力が低下して重いものが持てない場合、設備を改善して重いものを持つ必要を減らすことです。視力が低下して細かい字が読めなくなった場合は表示板の文字を大きくし、デジタル表示にすることで解決できます。歩行作業が多く肉体的負担があるのなら動線を短くする、または作業者ではなく部品や製品が動く仕組みをつくるなどの方法があります。コストがかかるのですぐには改善できないならば、担当者を若手に変えることも一つの方法でしょう。仕事と生活のバランスが変わる高齢者には一日おきの勤務、週前半や後半のみの勤務、午前や午後のみの勤務など、勤務形態を工夫することで対応できます。仕事の中身についても同様です。多くの高齢者にとって高齢期も無理なく続けられる仕事とは長年従事してきたものでしょう。高齢者のなかには変化に対する柔軟性や新しいものを習熟するスピードが低下している人もいるのですから、長年行ってきた仕事を続けることで環境が安定し、不安が除かれます。一方で多様化している高齢者ですから、新しく挑戦できる仕事を望む人もいるでしょう。管理職や監督職といった役割を負担に感じ、責任の重圧から逃れたい人も、責任を励みにこれからも役職を続けたい人もいるでしょう。それぞれに応じて職務や責任、役職についても多様なメニューを用意すべきではないでしょうか。職場の高齢者を理解するここまで高齢者の特徴や会社や職場での工夫について説明してきましたが、あくまで一般論です。みなさんの職場の高齢者の方々の実態を知ることから始めてください。その際、以下の点に注意してください。■高齢者を思い込みでイメージしない高齢者が多様であることは説明しましたのでおわかりでしょうが、「高齢者というのは〇〇だ」と一ひと括くくりにして考えて一般化しないでください。その思い込みが、高齢者の実情とかけ離れることもあります。高齢者はだれもが体力低下したり、保守的になるわけではありません。同様に、高齢者雇用の担当者自身がたとえ高齢者と年齢が近くても、「自分と同じ年代だから」と自分のイメージで相手をとらえないことです。高齢者も人それぞれですので同年代であっても考え方がまったく違う場合もあります。■本人と周りから話を聞くまず高齢期を迎える(迎えた)一人ひとりにしっかり話を聞くことです。相手が何を考えているのか、何ができて何ができなくなってきたのか、どのような働き方を望んでいるのかについて予断を持たずに聞いてみましょう。「こんなことを考えていたのか」といろいろな発見があるでしょう。話を聞く相手は、高齢者だけではありません。高齢者と一緒に仕事をすることになる、職場の同僚や上司からの話も貴重な情報源です。彼らは高齢者と一緒に働くのですから、高齢者が働

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