エルダー2019年7月号
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2019.710きやすい環境を考えるうえできっと参考になるはずです。■会社の思いを高齢者に伝える会社としてみれば、高齢者の願いにすべて応えることはむずかしいものです。多様な高齢者の要望のなかには、わがままや無理難題と思えるものもあるでしょう。たとえ真しん摯しなものであってもコストの面で応えられないこともあるでしょう。反対に会社の考え方を説明して、高齢者に理解を求めることもできるのではないでしょうか。高齢者に考え方や態度を変えてもらうのです。「もうひと働きしたい」、「引退するのはまだまだ先」と思いながらも、「体力が落ちてきた」、「根気がなくなってきた」、「仕事がきつくなってきた」と感じている人もいます。「管理職を降りたらどのように仕事をすればよいのだろう」、「再雇用になったら自分はどう扱われるのだろう」と不安になっている人もいます。彼らも自身を取り巻く環境の変化を感じています。変化への対応を円滑にするためには会社からのアプローチが必要です。高齢期の働き方として会社が期待していることを知らせ、本人の意向とすり合わせることです。会社が高齢期の彼らに何を求めるのか、そのためには何を身につけてほしいのか(例えば、若手とのコミュニケーション能力や指導法など)、コストが理由で彼らの期待に応えられることと不可能なことは何か、どんな勤務形態なら会社として受け入れられるかなど、会社と高齢者の思いをしっかりすり合わせることが、彼らのその後の働き方や意欲に影響するのです。高齢者が活躍できる環境をつくる■高齢期前からの研修で意識を改革する高齢になると、固定観念や考え方を変えるのは簡単なことではありません。そこで60歳の節目を迎えるころだけではなく、40代や50代のころから高齢期を見据えた研修を実施し、彼らの意識改革をうながす仕組みをつくることが必要です。多くの会社では、60歳以降の境遇は大きく変化します。定年後の再雇用として身分や処遇が変わったり、役職から離れたり、会社が求める役割が第一線での業務から後継者育成など後方支援的な仕事に重点が移ってくることもあります。体力や健康、家族との関係、仕事と生活のバランスが変化していくのもすでに述べた通りです。もっとも人によって変化する場合もしない場合もあるのが高齢期の多様性です。高齢期を迎える人々には、自身が直面する可能性の高いこれらの変化を早期に感じ取ってもらい、その時点での自分として望ましいと考える立ち位置(職場での役割、仕事の仕方や働き方)を60歳到達が現実になる前に想像し、そのために何をいつからどのように始めておくべきかといった準備を意識してもらうべきです。つまり「変へん容よう転てん躍やく」が必要なのです。◦変(自分を取り巻く環境が変わる)◦容(身の回りの変化を受け容いれる)◦転(発想を転換し新しい環境に臨む)◦躍(新たなステージで活躍する)「変容転躍」が実現すれば、60歳を超えて働いてもらう前にさまざまな変化を高齢者が知り、その変化を受け入れ、いままでのやり方に固執することなく発想を転換し、彼らの持つ豊富な経験や知識で会社や後輩に貢献してくれるでしょう。■処遇を工夫して高齢者の意欲を高める立ち位置を変えて心機一転して活躍しようと考えている高齢者の意欲を高めるにはいくつかの工夫が必要です。高齢者のモチベーションを高めるには処遇が特に重要な要素となります。多くの企業では高齢者の賃金が定年前に受け

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