エルダー2019年7月号
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特集エルダー11あなたの会社は大丈夫? トラブルから学ぶ高齢者雇用入門取っていた水準からは大きく低下するため、それが高齢者の働く意欲を低下させる一因となっていることがあります。「一生懸命働いている人もそうでない人も、もらえる賃金は変わらない」というのでは意欲が低下しかねません。例えば定年後も、人事考課とそれを反映した昇給や賞与を行うことが効果を生みます。お金にかぎらず、本人の名前を冠かんした「〇〇塾」、かぎられた者のみが名乗れる肩書や呼称も効果があるようです。■職場の同僚が高齢者を理解するこれから高齢者を迎える職場の人々にも、高齢者に対する理解を深めてもらうようにしましょう。職場の人々は高齢者のイメージとして「熟練した技能がある」、「仕事がていねい」など肯定的なものも持っているでしょうが、反対に「新しいことに対応できない」など否定的なイメージが職場に広まっていると、現役と高齢者の相互信頼が生まれません。それでは職場のなかに高齢者の強みを吸収する雰囲気が生まれにくくなってしまい、高齢者の持つ強みを若手や中堅に伝授する風土が育ちません。多くの調査によれば、高齢者と一緒に働く若手社員は、そうでない者よりも高齢者を尊敬しているという結果が出ています。若年者や中堅社員の身近に高齢者がいる職場環境を生み出し、強みも弱みももつ高齢者の実際の姿を知ってもらい、実感してもらうことは両者の歩み寄りをうながし、相互理解の第一歩となります。■管理職が高齢者と若年・中堅をつなぐ高齢者雇用の取組みでは、職場の管理監督職の役割が重要です。高齢者から若手・中堅社員が学ぶ機会があっても、現役社員は高齢者に近づきがたいイメージを抱いて本当は聞きに行きたいのに敬遠したり、高齢者は継続雇用で役職者ではないので上司の手前、自分から教えに行っていいのかと遠慮したりします。管理監督者は、双方が自然に歩み寄れる雰囲気や風土をつくりましょう。■外部の情報や人材を活用するさて、実際に高齢者雇用を効果的に進めようとしても、手がかりがないかもしれません。参考になるのは他社の事例です。そのような情報は高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページにある「高年齢者雇用開発コンテスト企業事例情報システム」※から検索できます。多くの企業の取組みが業種や規模、または地域別に検索可能ですのでお役立てください。当機構のさまざまな出版物もご活用ください。また全国には都道府県ごとに当機構直属の65歳超雇用推進プランナーや高年齢者雇用アドバイザーがいます。企業実務を理解して企業の高齢者雇用の取組みを指導している専門家です。ぜひご相談ください。失敗しない高齢者雇用を目ざして高齢者雇用を進めることは、必ずしも容易なことではありません。しかしながら積極的に施策を進める会社では、ベテランの力をうまく活用して企業としての競争力を向上させることに成功しています。高齢者に対する先入観を持たずに個々の高齢者の状況をしっかり把握し、彼らの弱点を補いながらその強みをしっかり活かせる仕組みをつくってください。常に状況を観察し、不備な点があったら改善する、それが失敗しない高齢者雇用につながります。忘れてはならないことがあります。実は高齢者が働きやすい職場というのは老若男女だれにとっても働きやすい職場であるということです。みなさんも一歩一歩で結構ですから、高齢者の働きやすい職場づくりを進めていただきたいと思います。※ 高年齢者雇用開発コンテスト企業事例情報システム……高年齢者 事例情報システム検索

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