エルダー2019年7月号
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特集エルダー15あなたの会社は大丈夫? トラブルから学ぶ高齢者雇用入門適正な評価・処遇の整備には正社員としての高齢社員に期待する役割の明確化が必要定年延長の実施は、正社員の賃金カーブの決済期間、とりわけベテラン期の期間が長くなることを意味します。すなわち、旧定年年齢で「貢献度=賃金」が終わったにもかかわらず、ベテラン期の「貢献度〈賃金」の状態が定年延長した期間分続くので、会社のコスト負担が増えることを意味します。その解消のため、マンガに登場する会社は定年延長した期間の賃金カーブを「貢献度=賃金」になるように設定し、それに基づいて高齢社員の賃金制度(再雇用時代の賃金制度の継続)を決めていたのです。それでは定年延長実施後の高齢社員の賃金をどのように考えればよいのでしょうか。高齢社員は「貢献度=賃金」の決済期間はすでに旧定年年齢(例えば、60歳)で終わっているため、現役社員の賃金をそのまま適用すると、「貢献度〈賃金」となり人事管理の公平性の観点から問題となります。そうなると「貢献度=賃金」となるように、新しい定年年齢までの一貫した人事管理の基本方針の下で賃金の決め方(賃金カーブと賃金制度)を見直す必要があります。また、正社員となった高齢社員の役割や仕事内容を見直す必要もあります。すなわち、継続雇用時の、正社員を支援あるいは補助する役割や仕事ではなく、正社員として長年の勤務でつちかってきた能力や経験を活かして職場に貢献できる新たな役割や仕事をになってもらうのです。管理職として引き続き職責をになってもらうマネジメント業務もあれば、能力や経験を活かした専門業務や後輩の指導業務など多様な選択肢があります。人材活用施策の関係上、管理職だった高齢社員全員に元のマネジメント業務を適用することはむずかしい状況にあります。そこで、会社が高齢社員に正社員として期待する役割を明確にして、職場の状況と高齢社員一人ひとりの適性に応じた仕事に従事してもらうことが求められます。高齢社員の適正な処遇の整備の際は、正社員として期待する役割の明確化と一緒に進めることが求められます。左記に、適正な処遇整備を実施している事例を紹介します。製造業のE社は、長年つちかってきた経験と高いスキル、さまざまな専門性を持ったシニア層が60歳以降も安心して働くことができる環境の整備を図るために、2018(平成30)年6月に65歳定年制を実施しました。定年延長の対象者はこれから60歳を迎える現役社員と、現在継続雇用者として同社に勤めている60代前半(60~64歳)の高齢社員です。ただし、定年延長対象者の継続雇用者については該当者全員ではなく、正社員への復帰を希望する者としています。65歳定年制実施後の高齢社員の人事管理について、賃金制度は現役社員の賃金制度が適用されますが、水準は60歳到達時から一定率が削減され、昇給は実施されません。賞与と人事評価は現役社員と同じ仕組みがそれぞれ適用されます。なお、役職については同社は役職定年制を実施しており、その役職定年が60歳に引き上げられました。同社が高齢社員に求める役割は、これまで通り戦力として活躍してもらうこと、長年つちかってきた経験や能力を次世代に伝えることとしています。出典: 高齢・障害・求職者雇用支援機構『65歳超雇用推進事例集2019』を一部修正65歳定年制実施により継続雇用者も正社員に復帰可能に事 例1

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