エルダー2019年7月号
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特集エルダー17あなたの会社は大丈夫? トラブルから学ぶ高齢者雇用入門トラブルの要因は管理職から一般社員への意識の切り替えの不十分さ会社の中核的な役割をになってきた管理職にとって、理想的なキャリアはそれまでつちかってきた知識や経験、能力を定年まで活かし続けることです。しかしながら、人材活用施策の関係上、定年まで管理職として働き続けることがむずかしく、定年前に役職を外れる役職定年制を導入する会社が、大企業を中心に増えつつあります。図表1のように役職定年を迎えた管理職は役職を離れ、専門職、専任職、あるいは一般社員等の非管理職(以下「一般社員等」)として定年までのキャリアを歩むことが一般的です(なお、役職定年に到達しても会社の事情で引き続き役職を継続する管理職もいます)。役職定年制導入前の管理職は、「役職という階段をあがり」、「定年と一緒に役職を離れる」という「のぼるキャリア」の意識のもとで職業人生を歩んできています。しかしながら、役職定年制の導入は、正社員としてのキャリア形成が、定年前に役職を「くだるキャリア」に変わることを意味します。「のぼるキャリア」の意識のもとで職業人生を歩んできた役職定年を迎えた管理職は、その後、一般社員等として引き続き仕事に従事してもらう役職定年制の仕組みを頭では理解しても、その心構えと意識の切り替えの準備ができていない状況にあります。こうした状況に対して、役職定年制を導入している会社のなかには、役職定年の直前に、役職定年を迎える管理職との個人面談などの話し合いの場を設けていますが、その内容は一般社員等としての心構えや意識の切り替えなどではなく、会社から役職定年後に求められる役割や仕事、処遇の変更等の提示・確認といった手続きを中心としているのが実情ではないでしょうか。一方、元管理職の高齢社員(以下「高齢社員」)は役職を離れたとしても、一般社員等への意識の切り替えが十分にできずに管理職の意識が残ってしまい、仕事や職責の変化、新しい役割などにうまく適応できず、マンガに登場する高齢社員のように、職場の一般社員と同じ目線に立つことができず管理職として立ちふるまってしまい、現役社員との間にトラブルを引き起こしているのではないでしょうか。管理職のキャリア教育を段階的に実施して意識改革を進めるこのような状況を見直すには、役職定年制導入にともなうキャリア形成のあり方や、働き方65歳定年制を導入しているB社では、管理職は60歳で役職定年を迎えます。しかし、役職定年を迎えた管理職のなかには、役割や立場の変化に適応できず、管理職気分が抜けないまま業務にあたるため、その偉そうな態度に、不満を募らせている現役社員もいるようです。トラブルの要因図表1  役職定年制導入による管理職の定年までのキャリアの変化出典: 筆者作成役職定年制導入前役職定年制導入後役職定年定年管理職継続雇用者管理職一般社員等継続雇用者

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