エルダー2019年7月号
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2019.718への意識改革などを目的としたキャリア教育を管理職に対し実施することが必要になります。管理職を対象に会社が実施している主な研修に、「管理職研修」と「ライフプラン研修」があります(図表2)。「管理職研修」はマネジメント能力やリーダーシップなどの習得を通して管理職としての意識改革を図ることを、「ライフプラン研修」は定年後のキャリアや生活設計などを考えることをそれぞれ目的とした研修です。しかし、これらの研修は先に紹介したように「のぼるキャリア」を前提に制度設計されているため、「くだるキャリア」に対応した役職定年後の一般社員等としてのキャリアの準備に対応できていない状況にあります。そのため、「くだるキャリア」に対応した研修(キャリア教育)の整備が必要になります。管理職のキャリア教育のポイントは大きく三つあります(図表3)。第一は、「管理職の意識改革」です。役職定年後の職場における高齢社員の立場と会社が求める役割が変わることの意味を伝えます。これまで高齢社員は管理職として部下に仕事の指示を出す立場でしたが、役職定年後は一般社員等として上司から指示を受けながら仕事に取り組む立場に変わります。また、役職定年前の高齢社員は管理職として役員から指示を受ける立場でもありましたが、その役員の多くは自分より年上で、なかには元上司である場合もあるので、指示を受けることの抵抗感はそれほどでもないかもしれません。しかしながら、役職定年後は仕事の指示を受ける上司が自分より年下で、しかも同じ職場で引き続き仕事に従事する場合には、その上司が元部下である可能性もあります。そうなると、指示を受けることに対し抵抗感を持つ場合もあります。さらに、一般社員等として職場の若手社員と協力し合いながら仕事に取り組むことに抵抗感を持つ場合もあります。第二は、「管理職の能力の棚卸しと更新」です。これまでの「のぼるキャリア」のもとでは、定年まで管理職の役割をになうため、管理職として必要なマネジメント能力やリーダーシップなどの習得・向上にだけ専念していれば問題はありませんでした。しかしながら、役職定年を迎え一般社員等に切り替わると、ライン業務に従事することになります。管理職のままであれば、部下に業務の指示を出すことで問題はありませんでしたが、一般社員等に切り替わった場合、指示を受ける立場になるので、ライン業務に必要な知識や能力などを磨いておくことが求められます。また、定年後の再雇用などの継続雇用に切り替わった後でも、同様な対応が必要となります。第三は、「キャリア教育の実施時期」です。役職定年の定年年齢は一般に50代半ばから始まります。キャリア形成のあり方が大きく変わりますので、50代になってからキャリア教育を始めるのではなく、第一線で活躍している40代から定期的に実施することが必要になります。図表2  管理職を対象にした主な研修出典: 筆者作成種類目的管理職研修マネジメント能力やリーダーシップなどの習得や管理職としての意識改革などライフプラン研修定年後のキャリアや生活設計などへの準備など図表3  管理職のキャリア教育の三つのポイント出典: 筆者作成項目概要意識改革役職定年後の立場の変化と一般社員等としての役割を担う意味を伝えるスキルの棚卸しと更新役職定年後のライン業務の遂行に必要な知識、能力の習得・更新キャリア教育の実施時期40代から段階的に実施

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