エルダー2019年7月号
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特集エルダー21あなたの会社は大丈夫? トラブルから学ぶ高齢者雇用入門トラブルの要因は既存型の働き方を高齢社員にも適用していること65歳定年、70歳再雇用制度の実施など、高齢社員が長く働くことができる環境の整備に取り組む会社が増えつつあります。解説1で触れましたが、定年延長した際、その延長の期間を引き続き正社員とする場合には、公平性の観点から一貫した人事管理の基本方針のもとで処遇などの個別施策を考えることが、重要なポイントとなります(図表1)。ですので、現役社員の働き方がフルタイム勤務、そして多くの企業で一般的に導入されている始業時間、終業時間が正社員全員に適用されている労働時間制度(以下「一般的な労働時間制度」)であれば、定年延長の期間分の高齢社員の働き方についても同じようにフルタイム勤務、一般的な労働時間制度(以下「既存型の働き方」)を適用することが求められます。しかしながら、他方で高齢社員が現役社員と同じように仕事に意欲的に取り組もうとしても、加齢にともなう身体機能の低下、介護などの家庭の事情への対応により遅刻、早退、急な休みがみられ、現役社員と同じ働き方(既存型の働き方)を続けることがむずかしい場合があります。もちろん、現役社員であっても個別の事情はあります。高齢社員の場合、現役社員以上に個別の事情が発生しやすく、既存型の働き方を続けることがむずかしくなるのです。正社員として長く働き続けることができる環境を整備したことが、かえって会社や職場に影響を与えてしまうこともあります。マンガに登場する高齢社員が多く活躍している会社(C社)でも、既存型の働き方を高齢社員に適用したことで、遅刻、早退、急な休みが重なり職場の業務遂行に支障をきたし、職場で一緒に働いている現役社員、上司に迷惑をかけることにつながってしまうのです。正社員の一員として高齢社員にも適用可能な多様な働き方を考える高齢社員が正社員ではなくなり、再雇用などの継続雇用に切り替わる場合には、個別事情に合わせたフルタイム勤務のほかに、パート社員と同じ短時間勤務、あるいは短日数勤務などの多様な働き方を適用することができます。しかし、正社員と同じ雇用区分の高齢社員にもそのような働き方を適用するのは、人事管理の公平性の観点から問題です。なぜなら、現役社員のなかにも介護、育児、病気治療などの個別事情がありつつも、既存型の働き方で勤務している社員がいるからです。正社員の一員である高齢65歳定年制を導入しているC社では、多くの高齢社員が在籍しており、戦力として活躍しています。その一方で、本人の体調や家庭の事情などにより、遅刻や早退、急な休みをとる高齢者も少なくなく、その分の業務をカバーしなくてはいけない若手社員は負担を感じているようです。トラブルの要因図表1  人事施策の考え方出典: 筆者作成人事管理の基本方針個別施策例)処遇個別施策例)評価個別施策例)教育・研修…

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