エルダー2019年7月号
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2019.722ちます。こうした既存の正社員制度のほかに、勤務地、職務などの勤務条件が限定された正社員制度(限定正社員制度)や勤務時間や勤務日数を短くした正社員制度(短時間正社員制度)などの新たな正社員制度を導入する会社が、近年増えつつあります。これら新しい正社員制度はフルタイム勤務だけではなく、短時間勤務も選択可能としており、高齢社員を含めた正社員の個別事情に合わせて選択できる働き方を整備することが可能になります。既存の正社員制度に加え、新たに多様な正社員制度の活用を検討しておくことも求められます。高齢社員の希望と会社が期待する役割に合わせた働き方の整備に向けてこうした制度をもとに正社員の働き方を考え、それをふまえて高齢社員の働き方を検討することになりますが、その際は高齢社員の事情と高齢社員に対して会社が期待する役割のすり合わせが必要になります。というのも、高齢社員の個別事情を優先した働き方を選択した場合、その負担を現役社員が受けかねず、これにより現役社員の不満が高まることにつながりますし、他方、会社が期待する役割、すなわち会社の事情を優先した働き方を選択した場合にも、高齢社員側の事情に対応できないため、マンガのようなトラブルにつながるからです。さらに、業務の特性の確認も必要です。例えば、高齢社員の個別事情に合わせて仕事量を減らしても業務の特性上、柔軟な労働時間制度の設定がむずかしい場合があります。その一つに工場の製造業務があります。例えば、食品の製造・加工を行う製造業の現場では社員がチーム社員も、個別の事情に合わせて選択できる働き方を考えていくことが求められます。柔軟な労働時間制度と多様な正社員制度そうなると、高齢社員の個別事情に合わせて選択できる働き方をどのように整備すればよいのでしょうか。ここでは働き方を労働時間制度と正社員を区分する制度(以下「正社員制度」)の二つの視点から考えてみたいと思います。図表2をみてください。まず労働時間制度の種類には先に取り上げた一般的な労働時間制度のほかに、変形労働時間制、フレックスタイム制、みなし労働時間制、裁量労働制などの「柔軟な労働時間制度」があります。この柔軟な労働時間制度には適用条件があり、全社員への適用がむずかしい制度もあります。会社の事業の特性、職場の特性に応じて労働時間制度を適用することが求められます。次に正社員制度ですが、総合職、一般職といった将来のキャリア形成に対する会社の期待の違いで区分する制度や、事務職、技術職、技能職、営業職といった、仕事内容(職種)の違いで区分する制度が多くの企業で導入されています。これらの正社員制度は会社の事情に合わせたフルタイム勤務を前提にした制度という特性を持図表2 労働時間制度と正社員制度の概要出典: 筆者作成分野種類労働時間制度 ● 一般的な労働時間制度 ● 柔軟な労働時間制度:変形労働時間制、フレックスタイム制、みなし労働時間制、裁量労働制正社員制度■会社の事情に対応した制度 ● 将来のキャリア形成に対する企業の期待の違い:総合職、一般職 ● 仕事内容(職種)の違い:事務職、技術職、技能職、営業職など■社員の事情に対応した制度 ● 勤務条件の限定:勤務地、職務、勤務時間、勤務日数など

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