エルダー2019年7月号
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特集エルダー23あなたの会社は大丈夫? トラブルから学ぶ高齢者雇用入門を組んで製造・加工業務を行うため、チーム全員に同一の勤務時間である労働時間制度が適用されます。その職場にフレックスタイム制などの柔軟な労働時間制度を導入した場合、チーム全員がそろって業務を行うことができず、食品の製造・加工に支障をきたします。そこで、勤務時間は現役社員と同じにするものの、勤務日数を減らすなど柔軟な労働時間制度を適用することで、業務に従事しやすくなります。このように業務の特性をベースにしつつ、高齢社員の個別事情と会社の事情をすり合わせて働き方を検討していくことが求められます。そして、多様な働き方を進めることによる現役社員の負担を軽減するための解決策(業務の内容や遂行方法の見直し)を進めることも、これらにあわせて求められます。左記に事業の特性や業務の特性に応じて、多様な働き方を整備した事例を紹介します。介護関連施設20カ所を運営する社会福祉法人Hは、介護業界全体が人手不足状態のなか、60歳以降の再雇用制度のもとで働いている高齢社員が、安心して働き続けられる環境を整えることを目的に60歳定年制を廃止。さらに、定年制廃止に合わせて、正社員の柔軟な働き方を可能にするために短時間・短日勤務が可能な限定正社員制度を導入しました。限定正社員は労働時間の上限を週32時間にするとともに、週末の勤務が免除されます。正社員は自身のライフスタイルに合わせて限定正社員に変更したり、その後正社員に再び戻ったりすることも可能にしています。60代の高齢社員の1割が、現在限定正社員を選択しています。交通事業を展開するI社は、優秀な人材の安定確保、ならびに従業員のライフサイクルに応じて正社員のままで柔軟な働き方に対応することを目的に短時間正社員制度を導入しました。同制度の対象者は正社員全員で、本人の希望に応じて1日の労働時間、もしくは週の労働日数の短縮を選択することができます。短時間正社員の利用期間は本人が希望する3カ月以上の一定期間で、利用回数に制限を設けていません。60代の高齢社員の約2割が、短時間制度を利用しています。出典: 高齢・障害・求職者雇用支援機構『65歳超雇用推進事例集2019』を一部修正出典: 高齢・障害・求職者雇用支援機構『エルダー』2019年3月号、およびI社ホームページをもとに作成定年制廃止により再雇用者も正社員に復帰可能にライフスタイルに応じて労働時間を柔軟に変更できる短時間正社員制を導入事 例4事 例5図表  短時間正社員制の概要対象者①短時間正社員への転換を希望する正社員②短時間正社員として外部より採用される者転換理由制限は設けない措置の期間本人が希望する3カ月以上の一定期間措置の回数転換回数に制限は設けない職 種転換に際して、職種の変更は原則として行わない労働時間本人の希望をふまえて、個別に決定1日の労働時間もしくは週の労働日数を短縮

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