エルダー2019年7月号
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2019.726や立ち上がり動作、歩行などに影響します。また、筋力の低下とあいまって、俊敏性や平衡機能についても加齢による機能低下が生じてきます。健康増進の観点からすれば、適切な運動習慣を持つことにより、体力水準の保持や衰退の進行を遅らせることができますので、70歳現役を目ざすのであれば、50代・60代からでなく、長期的な視点で20代・30代からの運動習慣形成が重要です。省力化の観点から見た場合、重筋作業※2を代替するような設備投資は、高齢労働対策に適合した取組みといえるでしょう。例えば重量物の運搬作業を電動リフトなどにより省力化したり、最近開発が進んでいるアシスト・スーツ(動作・動力補助の機能が付いた着衣型の装置)を導入することが考えられます。しかしながら、一方的な設備機械の導入はかえって現場の混乱をもたらす可能性もあります。その理由の一つは操作性の問題です。マンガでは、作業姿勢について触れられています。現場の作業者の体格に合っていなかったり、操作が複雑で、段取り作業に過度な手間がかかるようでは、働きやすさや生産性の向上につながりません。事前に導入についてのヒアリングやシミュレーションを行いましょう。筋骨格系障害の予防の観点からみると、屈み姿勢や中腰姿勢、捻ひねり姿勢などは腰痛リスクを高めます。設備と作業者のマッチングに配慮し、作業面の高さや作業スペースについても気を配りましょう。作業面が高すぎたり、低すぎたりすると、肩こりや首痛にもつながります。また、作業スペースが十分でない場合、不自然な作業姿勢になることが多く、腰痛に代表される筋骨格系障害のリスクは極めて高まるといえますので十分注意してください。また近年では、同一姿勢の保持が腰痛リスクを高めることがわかってきました※3。この同一姿勢には、捻りや中腰姿勢をともなわない、立位や座位も含まれます。「座ってできる作業なので大丈夫」と決めつけず、同一姿勢を極力継続しないよう配慮することは、高齢労働者のみならず、職場全体で気をつけるべき重要ポイントです。次に安全面の観点から機械設備の導入を含めた職場環境改善についてみていきたいと思います。第一に考えたいことは転倒・転落の防止です。職場環境としては、「つまずき」、「踏み外し」、「滑り」の観点から職場を点検していきます。機械設備を導入することによって「つまずき」、「踏み外し」、「滑り」につながらないか確認しましょう。例えば、出入口や通路脇に物を置いているとつまずきの原因となり、水たまりや油高齢者の体力特性と省力化筋骨格系障害の予防・安全対策体力特性について、筋力に着目すると上肢(腕力や握力)に比べて、体幹・下肢(腹筋や太ももの筋力)の方が低下しやすいことが知られています。体幹や下肢の筋力低下は、姿勢の保持※2 重筋作業……身体全体の大きな筋肉を使い、仕事でエネルギーを消費するもの※3  厚生労働省(2013)「職場における腰痛予防指針」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/youtsuushishin.html20歳代を100としたときの比率年 齢%203040506070809010020~2930~3940~4950~5960~6970~7980~89(歳)会話中にほかの音が入る場合反響のある場合ふつうの会話図表1  加齢による種々な条件下での会話の聞き取り度の変化出典: 長町三生『企業と高齢化社会(生涯的職務設計のすすめ)』日本能率協会、1977

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