エルダー2019年7月号
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特集エルダー27あなたの会社は大丈夫? トラブルから学ぶ高齢者雇用入門汚れなどが床面にあると滑りの原因になります。また明るさが不十分だったり、機械設備によって影ができると、段差や突起を見落として、転倒・転落災害につながる場合があります。段差や突起などは極力解消することが望まれますが、諸事情によりむずかしい場合は、転倒・転落に対する注意喚起の表示を行いましょう。また滑りやすさに対しては靴底材や床材を工夫することにより耐たい滑かつ性を向上させることができます。安全靴を使用する場合はFマークがある(JIS T8101〈安全靴〉に適合している)耐滑性靴を採用することを検討しましょう。次に、挟まれ・巻き込まれ防止対策について考えていきます。挟まれ・巻き込まれ災害は、労働災害全体の約1割を占め、機械の回転部分に挟まれたり、巻き込まれたりして、身体の一部の切断などの重大な災害につながる恐れがあります。基本的な考え方として、回転部や開閉部などの挟まれ・巻き込まれ災害につながる設備機械がある場合は、ガード(接触の防止)や安全装置(自動停止等)の設置、標識・表示などによる注意喚起、機械の保守点検を行い、また作業者側も服装や携帯物について〝挟まれたり、巻き込まれたりする恐れがないか〞作業開始前に確認するようにしましょう。加齢の観点からみると、①視認性の低下、②身体的空間位置関係の認識力の低下、③敏びん捷しょう性の低下などが災害リスクを上げることになります。視認性・認識力についてはトラテープ(黒・黄の危険表示テープ)をうまく活用し、また万一の場合でも機械設備側の安全装置が働くよう二重・三重の構えで対策を行ってください。敏捷性については、一朝一夕で向上するものではありませんが、準備体操や危険予知訓練などによりある程度補うことができると思います。高齢労働者に対する研修機会の重要性最後に高齢労働者に対する「研修」の重要性について触れたいと思います。マンガでは機械の使い方を説明していますが、個々人の職務適応能力を向上させるために、研修の機会を設けることは、高齢期における〝ワーク・アビリティ(職務適応能力)〞の維持・向上にとって重要な要因となります※4。職務上のスキルを向上させたり、新しい設備投資に合わせた研修の機会を提供することは、作業者のコンピテンス(能力)並びに働く意欲の向上につながります。その際に気をつけたいことは、作業者に応じた研修になっているか、ということになります。研修の内容が高度過ぎたり、初歩的過ぎる場合には、その効果は望めません。説明や題材の工夫により、研修を受けた人の納得感や満足感を高めることができます。設備投資の機会をうまく活かし、その設備によってどのような効果が見込まれ、今後の企業活動において作業現場に期待される役割はどのようなものなのかなど、トップダウン型だけでなく、職場からの改善提案や安全上の配慮、作業負担の低減化の実現など、ボトムアップによる設備機械導入も、検討してはいかがでしょうか。※4  K.Tuomi et al.「Promotion of work ability, the quality of work and retirement」,Occup. Med., 51(5) pp.318-324.図表2  高齢者が働きやすい職場づくりに向けた五つの要素出典: 筆者作成設備機械の導入に際して高齢社員の特性に考慮しましょう!視覚特性文字は大きく、はっきりしたコントラストで聴覚特性高音や背景騒音を避け、聞き取りやすく作業姿勢捻り姿勢・屈み姿勢をなくし、同一姿勢の継続にも注意安全対策つまずき・踏み外し・滑りのチェック、安全装置の整備と注意喚起の徹底研修実施設備機械の導入を作業者の作業意欲・職場満足感を向上させる機会に!

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