エルダー2019年7月号
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エルダー31FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫トマトの丸かじりトマトは太陽からのプレゼントトマトは、夏の太陽が「がんばるんだぞーっ」といって、プレゼントしてくれた赤い長寿食。カンカン照りの太陽のエネルギーを取り込みながら、はち切れそうに完熟したトマトは、日ひ向なたくさい野生の味があり、ビタミンCやカロテン、抗酸化成分などが豊富に含まれています。完熟したトマトに、ちょっと塩をつけて思いっきり丸かじりすると、果汁がぶちゅっと飛んだりしますが、まさに太陽が育てた生命力のほとばしりという感じがして、体中に健康であるとの自信がみなぎります。トマトの原産地はペルーなどの南米。ナス科の植物で、ヨーロッパには16世紀の初めにもたらされ、18世紀になるとその栄養効果が知られ本格的に栽培されるようになります。日本には江戸初期には伝わっていましたが、食用として栽培が盛んになるのは明治になってからです。赤い色素成分で長寿力がパワーアップヨーロッパでは、「トマトが赤くなると、ドクターが青くなる」ということわざがあるそうです。そのわけは、トマトが赤く熟するころになると、人々は栄養効果の高いトマトをたくさん食べるので、病人が減り、医師の出番が少なくなってしまう、ということ。それほどトマトは栄養豊富であることを表現しています。現在と違って医療や薬が発達していなかった時代には、食物を上手に摂ることによって、病気を防ぐ習慣が何よりも大切だったのです。トマト特有のさわやかな酸味は、クエン酸やリンゴ酸などで、食欲増進や健胃作用、さらには疲労回復にも有効といわれています。完熟トマトは、わずかな酸味に混じって、甘味も増えています。太陽エネルギーによって、うま味成分であるグルタミン酸や果糖が多くなるためです。ビタミンCやE、カロテンも多く、いずれも強い抗酸化作用、つまり老化防止作用があります。注目されるのは赤い色素成分のリコピンで、抗酸化作用に加えて、血液サラサラ作用も期待され、高血圧などを予防するうえでもパワーを発揮してくれます。310

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