エルダー2019年7月号
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2019.72キャリアコンサルタント、株式会社ウイル 代表取締役奥山 睦さんコミュニティの活動を活発にするために働く人も含めて、社会にかかわっていく姿勢や意識を持ち続けることが、豊かな人生を送るうえで望ましいのではないでしょうか。 また、そうした意欲のある人を、高齢になったからといって排除せず、むしろその知識や経験、技術を大いに活かしていけるような社会であることが求められています。「生涯現役社会」とは、そのような社会と個人のあり方を目ざす言葉だと、私は思います。―シニア世代になっても、社会の支え手として期待される役割を果たすべく、意欲的に活動されている方は、奥山さんの周りにはたくさんいらっしゃるのでしょうね。奥山 そうですね。最も身近な例は、私の夫です。夫は、一部上場企業のグループ会社の取締役に就任したばかりの55歳で会社を辞めました。このまま定年まで役員をやって、その後は子会社の社長になって……という未来図がはっきり見えてしまい、それに飽き足ら―奥山さんは、起業家、著述家、大学教員、中小企業支援、キャリアコンサルタントなど、多方面にわたってご活躍されています。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の博士課程にも在籍され、研究の日々を送られているそうですね。この先、お年を重ねられても、「生涯現役」の人生を歩まれるのだろうと拝察しますが、そんな奥山さんは、「生涯現役社会」といわれるいまの時代を、どうとらえていらっしゃいますか。奥山 「生涯現役社会」とは、「高齢者がいくつになっても働き続けられる社会」のことだと理解されています。たしかにその通りですが、「働く」とは必ずしも「会社に勤め続ける」ことだけを意味しないでしょう。社会の支え手として活躍したり、人々から求められる役割を果たすことで社会に貢献するという生き方もあります。収入を得るだけでなく、収入はともなわなくても、または収入は少なくなったとしても、地域課題の解決を図ったり、ず、もう一度夢にチャレンジしようと思ったのです。そしてベンチャー企業を起業し、10年会社を育ててきたところで事業を売却し、一昨年からは地域センター※1の非常勤職員を引き受けたほか、町会の副会長など地域の仕事をしています。町会の仕事は、現役時代から地域貢献活動をしていたつながりから引き受けたのですが、いまでは、ビジネスが3分の1、町会などの地域貢献活動が3分の2くらいの割合で活動しているようです。―奥山さんは中小企業支援に長くたずさわってこられましたから、数多くの中小企業で高齢者が活躍されている実態を目のあたりにされていると思います。奥山 はい。私が活動の拠点としている東京都大田区は、中小企業の多い地域として知られていますが、従業員の高齢化に加え、経営者の高齢化と後継者難が進み、事業所数は減る一方です。 そんななかで、各社とも工夫をこらして技能継承や人材の採用・定着に取り組んでいます。その代表例の一つが、「電でん化か皮ひ膜まく工業株式会社」です。従業員の個々の事情に配慮した働き方への対応やITの導入などにより、人材の安定的な確保と生産性向上の実現に成「生涯現役」の働き方は〝雇われる〞、〝収入を得る〞だけではない※1 地域センター…… 地域の人々のコミュニティ活動や文化的活動の場として、町会・自治会活動や文化・学習活動など、さまざまな団体が利用できるように設置された施設

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