エルダー2019年7月号
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2019.746研究に基づき採用・育成プログラムを構築高齢人材「エルダー」の採用を本格化高齢人材の活用において、加齢による認知機能の低下など、心身の変化に応じた能力・スキル開発が重要な課題になりつつある。そうした高齢者の特性を考慮した独自の育成・研修プログラムを開発し、高齢人材の戦力化に取り組んでいるのが「株式会社TMJ」である。同社はコールセンターや事務処理センターの受託・運営を行うアウトソーシング事業を展開している。全国13拠点に約7000人のスタッフが従事しているが、もともとスタッフは若年層が主体となっていた。しかし、地域によっては人手不足が顕けん在ざい化し、高齢人材の活用を決断。ルセンターにおける高齢者対応に関する研究が大きく寄与している。人材本部の木きの下した哲さとし本部長は、産学ネットワーク参画の経緯についてこう語る。「当初は〝コールセンターに電話をかけてくる高齢者にいかに対応するか〞という観点から、高齢者の特性を学ぶためにスタートしたものでした。その後、〝高齢者が的確な仕事ができるようにするにはどうするか〞という就労に関する課題について研究するとともに、実際に当社で働いている70代など高齢者の就労の実態を調査してきました。そこで得られた知見やデータを集約し、採用の基準や研修のプログラムに活かす取組みを重ねてきました。そうした5〜6年の取組みの蓄積を体系化し、2017年1月子育てが一段落した50代から70代の主婦層や、定年退職後のセカンドキャリアとして仕事をしたいシニア層など、就労に意欲的な人材を積極的に採用していくこととし、特に採用状況が厳しい北海道・札幌地区において、2017(平成29)年1月から、「エルダー」と呼ぶ50歳以上の人材の採用を本格化した。現在、エルダーのスタッフは約1800人。以前から50歳以上も採用していたが、2017年の本格採用以降は、毎年スタッフが前年の2倍以上になるなど倍増している。エルダーの採用と定着を支えているのが同社の採用・育成プログラムだ。実はプログラムの開発にあたっては、2011年から東京大学の産学ネットワーク「ジェロントロジー(老年学)」に参画し、コー 生涯現役時代を迎え、就業期間の長期化が進むなか、60歳以降も意欲的に働いていくためには、高齢者自身のスキルアップ・能力開発が重要になるといわれています。つまり、生涯現役時代は「生涯能力開発時代」といえます。本企画では、高齢者のスキルアップ・能力開発の支援に取り組む企業の施策を、人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説します。高齢社員の磨き方―生涯能力開発時代へ向けて―高齢社員の高齢社員の―生涯能力開発時代へ向けて高齢社員の―人事ジャーナリスト 溝みぞ上うえ憲のり文ふみ第3回株式会社TMJ(東京都新宿区)

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