エルダー2019年7月号
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エルダー47から高齢人材の採用・育成の本格的スタートにふみ切ったのです」「くり返し」の学びで理解度を深める通常採用の人材とは異なる研修プログラム通常の採用活動では、早期離職の防止やパフォーマンスの発揮などの採用基準に基づいた採用検査システムで判断するが、エルダーは許容範囲を広げて柔軟に採用している。人材本部人事戦略部TMJユニバーシティの川かわ添ぞえ千ち寿ず子こ氏は、採用の判断についてこう語る。「コールセンターの仕事なので、聞き取りが困難な人はむずかしいのですが、基本的にはコミュニケーション能力を重視します。また、早期離職の要因となる持病や家族の介護を抱えている人は確認しながら判断します。業務に不可欠なパソコンスキルについてはタイピングテストを実施していますが、通常の採用よりも基準を下げて柔軟に判断しています」そうして採用した人材を一人前に育成するには、研修や職場での教育が大事になるため注力しているのが入社後の研修だ。コールセンターのオペレーターの仕事は、顧客からの問合せに対応する「受信業務」と、営業などの電話をかける「発信業務」の二つに分かれる。研修は「プレ研修」と、配属後の「業務研修」が行われるが、通常のプレ研修が3時間半なのに対し、エルダーに対しては3日間かけて行っている。また、1回の研修参加者数は通常は約50人だが、エルダーは約10人と少人数にしている。エルダーの研修を長時間かつ少人数としているのは、トライアルのテストケースをふまえてのもの。木下本部長は、「テストケースでは、通常と同じ研修で『やはり無理です。私は覚えきれません』といって離脱した方もいました。試行錯誤を重ねながらプログラム化を進めました」と話す。研修は同じ内容をくり返し学び、理解度に応じて進めることを基本にしている。「プログラムはほかの年代層と同じレベル感で、業務研修に参加できることを目標に設計しています。基本的には同じ内容をくり返し練習することで上達しますし、そのために長めの時間を設定しています。また、疲れないように60分ごとに10分の休憩を設け、休憩中には、記憶を活性化させるために、手を使った体操なども実施しています」(川添氏)3日間のプログラムは図表の通りだ。初日は丸1日、2日目と3日目は半日研修で構成されている。初日に行われる会社の理念や概要の説明に続いて目を引くのが「マインドセット」だ。コールセンターの役割を理解し、業務に対してやりがいを感じてもらうのが目的。また、エルダーは、保有する知識や経験が一人ひとり異なっているケースが多い。「これまで組織のなかで働いたことがない主婦の方もいれば、管理職の経験が長い人もいます。一方で、指導役の管理者は若手が多い。コールセンターでの仕事は、年齢や経験を問わず図表  プレ研修カリキュラム初日2日目3日目9:00-17:00(実働7H 無給休憩60分)9:00-13:00(実働4H 無給休憩0分)9:00-13:00(実働4H 無給休憩0分)時間内容所要時間内容所要時間内容所要時間8:309:00入社手続き60分1日目の振返り30分2日目の振返り30分9:30電話応対の基本100分総合演習(ロールプレイング)180分10:00オリエンテーション20分10:30TMJについて40分11:00マインドセット(コンタクトセンターの仕事とは?)65分11:30アウトバウンド業務とは30分12:00昼休憩わかりやすい説明の仕方とは20分12:30演習40分3日目の振返り40分13:00脳の活性化トレーニング&タイピング50分13:3014:00電話応対の基本110分14:3015:0015:3016:00振返り40分16:3017:0017:3018:0018:3019:00高齢社員の磨き方―生涯能力開発時代へ向けて―

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