エルダー2019年7月号
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懲戒処分の手続きについて4懲戒処分を行うにあたって、非違行為が存在することを客観的に明らかにすることが必要ですが、労働者の動機などもふまえて処分を決定する必要があります。そのような点を明らかにするために、懲戒処分を行う前に、非違行為者に対して「弁明の機会」を付与することが手続き的な正当性を維持するために重視されています。使用者によっては、就業規則や懲戒規程などにおいて、懲戒処分の手続きや審査方法として、懲戒委員会を組織し、同委員会において弁明の機会を与えたうえで、最終的な懲戒処分を決するものとしている場合があります。このように就業規則において懲戒手続きを定めた場合、使用者もこの手続きを遵守しなければならず、これに違反する場合、懲戒権の濫用に該当するものとして、懲戒処分が無効となる可能性が高くなります。また、懲戒処分の際に懲戒事由としていなかった理由を、後日、懲戒処分の有効性を維持するために追加することは、弁明の機会を与えることなく懲戒処分を行うことにつながるため、原則として許されないと考えられています。業務委託と労働者性について1労働基準法第9条において、「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定められ、労働契約法第2条においても、「この法律において『労働者』とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう」とされており、その定義は複雑ではありません。要素としては、「使用者に使用されて、賃金を支払われる者」という整理になりますが、業務委託を受注する個人についても形式的にはこれに該当しそうです。とはいえ、労働契約と業務委託契約では、その求める内容や契約当事者の意識も異なるはずです。したがって、これらの区別については、形式のみではなく実態をふまえて判断することとされています。この場合の「実態」を判断するための基準とされているのが、使用者に「使用」されていること、つまり、「使用従属性」があると評価ができるか否かということになります。労働者と判断されることのリスク2たとえ、業務を受託している個人が、労働労働者であるのか、業務委託であるのかについては、実態に即して判断されることになります。業務委託の形を整えただけであれば、実質的には労働者である場合、労働基準法や労働者派遣法などの規制が適用されることになり、法令違反を引き起こす恐れがあります。使用従属性の判断基準をふまえて、労働者と判断されないように留意する必要があります。A2019.752社内に常駐する業務委託者は、労働者と違うのでしょうか当社には、当社の業務を受託した個人が常駐しながら、業務を行っています。職場内では、座席も与えられており、ともに業務を遂行することもあるのですが、直接雇用されている労働者との違いはあるのでしょうか。日常業務において接するにあたって、留意すべき事項はあるのでしょうか。Q2

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